絶好調! MLBレッドソックス・吉田正尚が止まらない! 自身の打撃に辿り着いた境地とは? (2ページ目)
【ライバル・ヤンキース戦でのインパクト】
ファン、チームメイトからの信頼を得るうえで、宿敵ニューヨーク・ヤンキースとの対戦で2度にわたって大きな貢献を果たしたのも大きかった。
敵地ニューヨークでの7月5日のゲームでは、2点を追う9回二死一塁の場面で起死回生の同点2ランを放ち、延長での逆転勝利に大きく貢献。さらに同月26日、今度は地元での同カードで、7対7で迎えた8回一死二、三塁から勝ち越しの決勝中前打を放って、溜飲を下げた。
今ではレッドソックスとヤンキースのライバル関係は以前ほど熱いものではなくなったが、それでもほかのゲームと違うのは事実。そのカードで貴重な働きをしたことは、今季の吉田を語るうえで重要な意味を持ったのだろう。
「(吉田が)打てるのはわかっている。実績もある。ただ、いい打撃をしてほしい。15本塁打を打ってくれればすばらしいけど、自分らしい打撃をすればいいし、彼もそれを理解しているよ」
アレックス・コーラ監督のそんな言葉に代表されるように、以降、レッドソックスの周囲の人間たちの言葉はそれまでより温かなものになった印象がある。
吉田を語るうえで、5年9000万ドル(約135億円)という大型契約は、常に引き合いに出される。2024年はDH専属で、守備、走塁での貢献はわずかなだけに、依然として"高価すぎる"という一部からの声は聞こえてくる。それでもこうして勝負強い打撃を継続し、大事な9月以降も貢献を続けたら、どうだろうか? 現在、ア・リーグのワイルドカードの3つめのスポットまで4.5ゲーム差という厳しい位置にいるチームを、4年ぶりのプレーオフ進出に近づけるような働きができれば......。
「日々苦しみというか、いろんなことがある。それはみんな一緒でしょう。そのなかでもしっかり気持ち的に前を向きながら、何とか自分のやれることをやって、後悔しない日々を過ごしたいという気持ちでやっています」
メジャー2年目にして初めての負傷者リスト(IL)入り、打撃不振といった厳しい試練を乗り越えて迎えた今夏、吉田はしみじみとそう話していたことがあった。その言葉どおり、確かな打撃技術を持ったバットマンは停滞したままでは終わらなかった。
2024年を本当に"後悔しない"シーズンにするために――。ボストンの熱心なファンの視線がこれまで以上に熱くなる9月の戦いは、吉田にとって極めて重要なものになってくるはずである。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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