大谷翔平、「プロの打者」へ変化 ボール球を振る確率が減少し醸成される「王者」への機運 (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【序盤戦に休養欠場を受け入れた意味】

『ロサンゼルス・タイムズ』紙のドジャース担当、ジャック・ハリス記者は、ドジャースの現状を高く評価している。

「開幕前の予想より、彼らはうまくプレーできている。特にムーキーはミスをしたら、また同じ失敗を絶対に繰り返さないように真剣そのもの。心配なのは、こんなに練習して長いシーズン体力が持つのかということだが、今のところムーキーは打撃成績も良いし、影響は出ていない」

 取材を通じて感じるのは、ドジャースのまとまりのよさだ。世界一という大きな目標のために、みんなで力を出し合い、いい雰囲気を醸し出している。

「チームの絆はシーズンを通して育んでいくものだから、良い悪いを決めるのは早いけど、気づくのは大谷や山本由伸が自然にチームに受け入れられていること。水原一平・元通訳のスキャンダルもあったのに、頻繁に冗談を言い合ったり、笑ったり、溶け込んでいる。これはよい兆候。チーム側にとっても、ふたりにとっても、互いにね」(ハリス記者)

 チームに大きな目標がある点が、ロサンゼルス・エンゼルス時代とはまったく違うところだろう。エンゼルスももちろん勝つことを目指していたが、世界一は現実的ではなかった。

 大谷自身もドジャースの一員としてアジャスト(適応)している。それが見えたのは、5月12日のサンディエゴ・パドレス戦だった。前日の試合で腰に張りが出て、大谷自身は試合に出るつもりだったが、ロバーツ監督が休ませた。注目を集めたパドレスのダルビッシュ有との対戦が流れた。

 ロバーツ監督は「13連戦が始まったばかりで、どこかで一度は休まないといけない。我々は翔平に長いシーズンを通して健康でいてほしい。今は無理をさせる時ではない。理解すべきは、我々には究極のゴールがあるということ。10月まで、常にプレーする準備ができていないといけない」と説く。

 エンゼルス時代の昨季、7月27日に行なわれたダブルヘッダーのデトロイト・タイガース戦で大谷は1試合目に先発して完封、2試合目に2本塁打と野球史に残るパフォーマンスを見せた。だが、その後故障し、9月3日でシーズンを終えた。同じ轍を踏むわけにはいかない。

 大谷は、「疲れはあまりない」と言う。しかしながらチームの方向性に合わせている。試合後に筆者が投げかけた質問に、こう答えている。

「今年に関してはDHだけなので、身体的にすごくしんどい日がある感じはしない。どちらかというと、キャッチャーのウィル(・スミス)だったり、ベッツ選手もそうですけど、そういう選手(時に守備の負担を減らすためのDH起用)との兼ね合いだったりとか。連戦で必ず入るオフをどういう風に入れていくかは監督が考えていくことなので、そこは言われたところで取るべきではないかなと思います」

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