ベッツ、大谷翔平、フリーマンの脅威は下位打線の大不振で減少? ドジャース打線の現状と今後 (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【マイナーで控える次代のプロスペクト】

 とはいえ、こういったことは起こりうる。大切なのは、どれだけほかにも選択肢を用意しているかだ。

 ドジャースは4月16日、右打者の外野手、アンディ・パヘス(23歳)を昇格させた。大リーグ公式サイトの有望株ランキングトップ100に入っている選手で、ドジャース内では3位。2023年は右肩の大手術でほとんどプレーしておらず、2024年も復帰できるかどうか定かではなかったが、オープン戦で17打数8安打、2本塁打と活躍し、首脳陣に印象づけた。開幕は3Aスタートだったが、ここでも62打数23安打(打率.371)、5本塁打、15打点で、OPS(出塁率+長打率)は1.146をマークしている。

 ドジャースはパヘスを将来の正右翼手と見なし、今季は3Aで育成を続ける予定だったが、ベテラン右翼手のジェイソン・ヘイワード(34歳)が腰痛で戦線離脱し、アウトマン中堅手が打てていないことで(特に対左投手)、中堅でパヘス起用を考えた。

 ロバーツ監督はキャンプ中、「才能は確かで、このレベルでプレーできるし、今季いずれかの時点で昇格しても驚かない」とパヘスについて話していたが、早くもその機会が訪れた。

 ミゲル・バルガス(24歳)も控えている。父親はラザロ・バルガス。1992年のバルセロナ五輪で五輪史上初のサイクル安打を放ち、2度のオリンピックで金メダルに貢献したキューバの英雄だ。ミゲルは今3Aで打率.286、3本塁打、17打点と虎視眈々と昇格の機会を伺っている。

 ドジャースが近年強かった理由のひとつは、クリス・テーラー(33歳)やエンリケ・ヘルナンデス(32歳)のような複数のポジションを守れるユーティリティ選手が大暴れしていたからだ。WAR(打撃、走塁、守備を総合的に評価して代替可能選手=Replacementに比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを統計的に推計した指標)では、テーラーは2017年に4.6、2018年は3.6、ヘルナンデスは2018年に2.8だった。WARは一般的に4点台であればオールスター級、3点台は好選手、2点台は先発級と見なされる。しかしふたりともここ数年は数字が下降気味で、年齢も30代であることを考えると、今後は多くを望めないのかもしれない。それでもいろんなポジションを守れるし、野球巧者ではある。

 ベテランか、若手か。7番~9番問題を解決するのは誰か? 4月、5月は現有戦力の奮起に期待する。それでダメなら6月、7月はトレードなど他の手段を講じることになる。

 MLBではどの球団でも、オフに描いた青写真のように進まないことが多い。アトランタ・ブレーブスはスペンサー・ストライダー投手(25歳)、クリーブランド・ガーディアンズはシェーン・ビーバー投手(28歳)と、肘のケガでエースを失った。それでも両チームはここまで14勝5敗、15勝6敗と好成績を残している(現地4月20日時点)。

 強いチームは、層が厚いのだ。ドジャースもMVPトリオを筆頭に1番から6番は良いし、グラスノー、フィリップスと投手陣も牽引車的存在がしっかりしている。今は12勝11敗と苦しいが(それでもナ・リーグ西地区首位)、戦いながらチームとしての機能を高めていければいいのである。

「ドジャース投手陣の苦しい台所事情」はコチラ

プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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