大谷翔平が移籍したドジャースがポストシーズンで勝てていない理由 短期決戦での戦い方を考察 (2ページ目)
【運の中に見出すべき必勝法】
名著『マネーボール』の題材になったオークランド・アスレチックスの元GM、ビリー・ビーンも言っているように、データ分析を生かすことで、長期間のレギュラーシーズンはチームを好成績に導くことができるが、短期決戦のポストシーズンはそうはいかない。2004年にボストン・レッドソックス、2016年にシカゴ・カブスをフロントとして世界一に導いたセオ・エプスタインも「ポストシーズンは運だ」と言い切っていた。しかし今、分岐点に立つドジャースのフリードマンはそんな悠長なことは言っていられない。苛立つドジャースファンの不満に応えねばならない。
12月14日、ドジャーススタジアムで背番号「17」の大谷のお披露目会見では、冒頭からフリードマンは熱弁を振るった。
「翔平は私の考えではこのスポーツをプレーしてきた中で、最も才能ある選手だ。我々は彼の才能を高く評価してきたし、メジャーに来てからも進化を続け、今最もダイナミックなプレーヤーになっている。これまで彼のことを遠くから見てきたが、特にワールドベースボールクラシック(WBC)で、真の力を見せつけた。緊迫した、特にプレッシャーのかかる場面で、しっかりと自分の実力を発揮することができる。大舞台であればあるほど、見事なプレーをする」
ドジャースにとって幸運だったのは、勝ちたいという切迫感が大谷の心に響いたことだ。
大谷は会見で「心に残っている言葉として、(球団オーナーのマーク・)ウォルターさん含めて、ドジャースが経験してきたこの10年間を全く成功と思っていないこと。それだけ勝ちたいという意志が強いんだなと」と説明した。勝利への切迫感は大谷も同様だ。
「野球選手として、あとどれくらいできるかは誰もわからない。ケガを重ねる度にいつ終わるんだろうっていう不安もあるし、確実に終わりに近づいているというのはある。それまでにやり残したことがないようにと思っている。勝つことが今の僕にとっては一番大事」
どうすればポストシーズンでも勝てるのか。その答えを、大谷翔平とドジャースは見つけ出さねばならない。
◆大谷翔平&ドジャーズの未来考察・後編>>
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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