ダルビッシュ有「2017年の自分より、いい投手になった」。苦手だったプレーオフで、メッツに続き古巣ドジャースも撃破なるか

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 1イニングごとに、シティ・フィールドは静かになっていった。

 現地時間10月7日にニューヨークで行なわれたMLBプレーオフ、ワイルドカードシリーズ第1戦でメッツと対戦したサンディエゴ・パドレス先発のダルビッシュ有は、7回を投げて6安打1失点の快投。ポストシーズンで自己最長のイニングを投げ、チームの7−1での勝利に大きく貢献した。

「試合前から盛り上がっていましたけど、イヤホンをずっとしていたので。あまり聞こえなかったのがよかった。初回、2回の向こうのチャンスの時は本当に歓声がすごくて、横で『ワーッ』と言われているような感じだったんですけど、『ただの音だ』と考えたことでちょっと落ち着いたかなという感じです」

MLBワイルドカードシリーズ第1戦で、メッツ相手に勝利を挙げたダルビッシュMLBワイルドカードシリーズ第1戦で、メッツ相手に勝利を挙げたダルビッシュこの記事に関連する写真を見る 試合後、ダルビッシュがそう述べていた通り、この日のメッツの本拠地はとてつもない雰囲気だった。シリーズの下馬評は、シーズン中にチーム史上2位タイの101勝を挙げたメッツが優位、という声が一般的だった(パドレスは89勝)。ジェイコブ・デグロム、マックス・シャーザー、エドウィン・ディアスといった好投手を擁するメッツの前評判は高く、地元スタジアムにもその期待感が満ち溢れているようだった。ところが――。

 そんなニューヨーカーたちの前にダルビッシュが立ちはだかった。

 晴れのポストシーズン開幕投手を任されたが、実はこの日は絶好調というわけではなかった。1、2回は3塁に走者を背負い、しかもプレートを蹴る軸足がマウンドの土に擦れ、2回途中あたりから右足親指付近を出血するアクシデントも。そういった厳しい状況下でも崩れず、リズムを掴んだ3回以降、ダルビッシュはメッツ打線を手玉に取っていく。粘り強い投球を続ける36歳の投球術は際立っていた。

「(投球内容自体は)あんまりよくなかったですね。親指(の出血)がちょっとあったっていうのと、風が少し吹いていたので。投球練習の時から試合の数イニングはフォーシーム(直球)がちょっとカットしたり、ツーシームも試合中にカットしたりしていた。そこでスライダー系を多くしました」

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