澤村拓一のメジャー1年目に上原浩治も「100点満点」。苦境を「変わっていく勇気」で乗り越えた (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 前述のとおり、シーズン中からさまざまな試練を克服して1年を乗り切った。その粘り強さはプレーオフでも失われず、初登板での乱調後、ALCS第3、5戦での2登板は無失点。10月18日の第3戦では大胆にも、投球フォームをそれまでのセットポジションからノーワインドアップに変え、アレックス・ブレグマン、カルロス・コレアといったアストロズ打線の主力を抑えてみせた。

「困ったら勇気を持って前に進んだり、試したりすることがものすごく大事。失敗をした時には反省ももちろんしますけど、『次はこうしようかな』っていう工夫だったり、変わっていく勇気は大事なんじゃないかなと思います」

 澤村が投球フォーム変更について言及した際の、そんな味のある言葉も印象深い。プレッシャーのない場面での登板ということを考慮しても、"劇場"のマウンドをくぐり抜けた投球はスリリングで見応えがあった。

 冒頭でも述べたが、シーズン終了後の澤村は自己評価、総括を徹底して避けたが、それでも貴重な時間を過ごしたことは否定しなかった。「ポストシーズンというのはなかなか経験できる舞台ではない。そこで投げたこと、雰囲気を感じられたっていうのはいい経験になりました」という言葉は、正直な思いの吐露だったはずである。

メジャー1年目、レッドソックスの優勝を助けるという志は果たせずに終わったが、収穫は少なくなかった。澤村は試行錯誤を繰り返しつつ、徐々にでも前に進んだと言えるからだ。

「監督、コーチをはじめ、選手、スタッフの1人ひとりに支えられたおかげでこの場(プレーオフ)に立っていることができた。皆さんに感謝しています」

 そう丁寧に述べた澤村の行く手に、メジャーリーガーとしての真価が問われる2年目が待ち受けている。厳しい戦いは続くはずだが、今季に味わった悔しさを忘れずにおけば、そこで得た貴重な経験は来季の糧になるはずだ。そして、フィールド内外での多くの試練を突破し続けたことの自信は、また新たな力になり、その右肩に宿るはずである。

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