澤村拓一のメジャー1年目に上原浩治も「100点満点」。苦境を「変わっていく勇気」で乗り越えた (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

「100点満点でしょう。すばらしいと思いますよ。1年目から50試合以上投げて、防御率も3点台ですから」

 打力のあるチーム、打者有利の球場が多いア・リーグ東地区の厳しさを熟知したレッドソックスの"先輩"上原浩治がそう述べていたとおり、時に苦しみながら、貢献の術を探し続けたメジャー1年目の働きは合格点と言っていいだろう。イニング数が少ない中継ぎとはいえ、渡米以降もパワーピッチャーであり続けることができた稀有な日本人投手であったことも評価されていい。

 今季、日本人選手としては唯一プレーオフに進んだが、波乱の道はポストシーズンでも続いた。プレーオフ開始前、「1年間、やってきたことを自信に持って、正々堂々と胸を張って相手にぶつかっていきたい」と意気込んだものの、ワイルドカード戦、地区シリーズは選手登録外。緊張感に満ちた戦いを、ただ見ていなければいけない悔しさを味わった。

 ようやくロースターに入ったア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)でも、第1戦での初登板時には緊張から制球を乱し、1/3イニングで1安打、2四死球で1失点と乱調。その試合後、澤村は「これまでに経験した中でも、別格のすごい雰囲気だった。呑まれてしまった」と正直な言葉を残した。

 この日以降、澤村は2度、ALCSのマウンドに立ったが、すでに大差がつき、勝敗が決した場面での登板だった。澤村に対しては「9月のコロナ感染後はやや調子が落ちていた」という見方もあり、アレックス・コーラ監督をはじめとする首脳陣からの信頼を完全回復するに至らなかったのは残念だった。

 しかし――。最後の最後で再び苦しい時間を味わったとしても、澤村のメジャー1年目は価値と意味があるものだったように思える。

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