大谷翔平の「現状には不満足です」。元メジャースカウトが提案する新たな二刀流への挑戦 (2ページ目)

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru
  • photo by Getty Images

 そう回想し、「高校時代のイメージと全然変わってしまったので、なんとも言えないですが......」と前置きし、こう続ける。

「日本ハムに入って二刀流をやり、一気に体つきが野手になったんです。体が大きくなって、ピッチャーとしては体と脳の感覚がズレているように映りました。そんななかでアメリカに渡り、速い球を投げる人の宿命といいますか、右ヒジの手術(トミー・ジョン手術)をして一度リセットできたんです。

 私自身もトミー・ジョンを経験したのですが、ピッチングがよくなるのは術後2年目以降なんです。そういう意味でも、今年はピッチングに"しなやかさ"が少し戻ってきたように思えます。体全体に筋肉がついているので、高校時代のようなしなやかさではありませんが、ある程度は戻ってきたように見えました」

 無論、小島は二刀流に対する否定論者ではない。ピッチャーとしての秘めた能力の高さをいち早く見出したが、バッターとしての資質も十分に理解していた。小島の言葉を借りれば、野球を舞台に躍動する「トップアスリート」。それが大谷なのだ。だからこそ、小島は言う。

「どちらかに専念したほうが、彼の能力を最大限に引き出すことができると思っているんです」

 それは単純な「専念」ではない。小島が提案する大谷の未来図は、じつに画期的だ。

「彼はエイリアンではないので、今の二刀流では体に負担がかかりますし、30歳になった時に今のパフォーマンスができるかと考えれば、正直どうなるかわかりません。たとえば、今年本塁打王のタイトルを獲ったら、来シーズンはピッチャーに専念する。ピッチャーとして5、6年やってサイ・ヤング賞を獲ったら、今度はバッターに専念して三冠王を狙えばいい。専念することで、それぞれで突き抜けてほしい。私はそういう二刀流を望みます」

 バッターに専念すれば、外野手でゴールドグラブ賞を手にしながら、シーズン60〜70本塁打も見えてくると、小島は言う。

「それに、今はピッチャーもやっているのでチームとしてはなるべく『走るな』となりますよね。でもバッターに専念すれば、今よりも盗塁を決められると思うんです。彼の感性、感覚、能力を考えれば、普通に50盗塁はできると思うんです。専念すれば、集中力も維持できると思いますし、体力的な疲労も全然違う」

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