大谷翔平の走力をメダリスト朝原宣治が分析。「股関節と肩甲骨の使い方がうまい」
2021年シーズン前半戦、打っては33本塁打(両リーグ1位)、投げては4勝という成績を残した大谷翔平(エンジェルス)。初出場を果たしたオールスターでも、史上初めて投打の二刀流(1番・投手)で先発し、勝利投手に輝くなど、MLBでセンセーションを起こしている。
こうした「投打」に加えて、大谷の突出した能力として挙げられるのが「走力」だ。前半戦で決めた12個の盗塁や、セーフティバント、内野安打で見せたスピード――その特徴と走り方について、2008年北京オリンピックの4×100mリレーで銀メダルを獲得した朝原宣治氏に分析してもらった。
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【大谷は"ゼロ発進"に秀でている】
――まずは同じアスリートとして、率直なところ、大谷選手をどう見ていらっしゃいますか。
「スーパーマンですね。まずはカッコいい。スタイルもいい。性格もよさそうで、純粋そうだし。それに野球の才能......と、すべてがそろっていて、うそみたいな存在。さながら漫画のヒーローですよね」
――本日は大谷選手の走力についてうかがいたいのですが、専門家の目から見て、走るフォームはどのように映っているのでしょうか。
「まず、僕が動画で確認できたのは3種類です。打ってから一塁までと、一塁から二塁への盗塁(二盗)、二塁から三塁への盗塁(三盗)。特に、二盗、三盗はどちらもすごくフォームがきれいです。癖がまったくない」
――二盗と三盗も、厳密には違うわけですか。
「スタートの仕方が、ぜんぜん違います。二盗のときは静止した状態から、三盗のときは軽く跳ねて着地した瞬間にスタートを切る。三盗は、反射の力を利用しているんです。テニスプレーヤーが相手のサーブを待ってボールを打ち返しにいくとき、軽くジャンプをしますよね。あのイメージに近いと思います」
――スタートは当然、静止状態からのほうが難しいわけですよね。
「僕は『ゼロ発進』と呼んでいるのですが、野球選手は、そっちのほうが苦手だと思います。僕ら(陸上選手)はそこが勝負なんですけど。ただ、大谷選手はゼロ発進も非常にうまい。野球選手は一歩目を蹴り上げる傾向にあるので、二歩目が遅れる。足が後方に流れ、体の中心が動き出すのが遅れてしまうんです。
一方、大谷選手は、体全体をボワっと動かす。一歩目から足だけでなく、腰や上半身が連動して動くんです。足を強く蹴っちゃうと、膝が伸びて、かかとが上がりすぎるので、その後の足の切り返しが難しくなるんですけど、大谷選手はそこまで蹴り上げない。なので、あんなに体が大きい(身長193cm)のに、非常にコンパクトに走り出せる。僕らもスタンディングスタートするときは『足走り』にならないように気をつけるんです。足だけでスタートすると、その後、どうしても回転数が上がってこないんですよね」
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