ダルビッシュ有、最多勝へ有利な条件多数。変則シーズンが追い風となる (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO


 そのコントレラスが昨年7月、右足の張りなどで2度の負傷者リスト入り。延べ1カ月以上も欠場しました。その時、ダルビッシュ投手とバッテリーを組んだのが控え捕手のカラティニだったのです。

 カラティニはプエルトリコ出身の26歳で、2017年にカブスでメジャーデビュー。それ以来、ずっとコントレラスの陰に隠れた存在ですが、昨年までチームを率いたジョー・マドン監督(現ロサンゼルス・エンゼルス)はカラティニを高く評価していました。

 ある試合での出来事。先発投手がゲーム終盤まで好投を続けていました。しかし、カラティニは「少し様子がおかしい」と感じ、すぐにマウンドへ駆け寄ったのです。その細やかなプレーを見て、マドン監督は絶賛しました。

「あれはスコアブックに載らない過小評価されたプレー。捕手であることに対する自信の表れだ。何が起こっているかを正確に把握できている。まるでベテランキャッチャーのようだ」

 そのカラティニとバッテリーを組み始めてから、ダルビッシュ投手の成績は見違えるようによくなり、コントレラスが復帰してもふたりの関係は続きました。結果、昨年はカラティニと19試合バッテリーを組んで防御率3.29をマーク。まさに「ダルビッシュ復活の陰にカラティニあり」といった感じです。

 地元紙によると、ダルビッシュ投手は相性抜群なカラティニとの関係について「俺たちは仲がいい。まるで兄弟みたいだ。お互いに相手の考えていることがわかる」と語っていました。

 ダルビッシュ投手が先発登板する試合前は一緒にランニングし、ほかの投手が先発する試合でカラティニがスタメンに名を連ねる時もブルペンでの投球練習に付き合うなど、ふたりは強い絆で結ばれているようです。

 昨年、ダルビッシュ投手は味方の援護に恵まれず、5月から6月にかけて10試合連続勝敗なしという球団新記録を作りました。しかし、今年は変則シーズンによるナ・リーグ初のDH制導入により、ピッチャーは代打で替えられる状況にならないため、勝利投手の権利を得やすくなる可能性も高くなるでしょう。

 思えば、ダルビッシュ投手ほどの大投手が日本ハム時代から一度も最多勝のタイトルを手にしていないことにビックリです。日本人初のメジャー最多勝タイトル獲得、大いに期待しています。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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