イチロー初球宴から20年。アメリカの価値観を変えた偉大な軌跡 (5ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO


 しかし、1920年代にベーブ・ルースが出現すると、それまで見たこともないような豪快なホームランにファンは大熱狂。カッブが愛した野球は端に押しやられ、ホームラン時代が到来しました。

 その時、カッブは「今日の野球界では、肉体的な能力さえ備わっていれば、人より10メートル遠くへ打球を飛ばすだけで、誰でもプレーできるように見える。科学は無用の世界だ」と嘆いたそうです。

 それと同じように、イチロー選手がデビューした当時は「ステロイド時代」でした。マーク・マグワイア、サミー・ソーサ、バリー・ボンズらが筋肉増強剤を使用し、まるでホームラン競争のように打球を飛ばしていた時代です。

 それに対し、イチロー選手は数々の華麗なヒットで勝負。カッブが活躍した時代を甦らせると同時に、本来の野球の素晴らしさ、ヒットの価値を見直させてくれたのです。

 イチロー選手が現役引退する時の記者会見で、彼はこのような言葉を残しました。

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