メジャー6年目。田中将大は「エリートレベル」の投手になれるか (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Image

 しかし、そのレベルを保ってフルシーズンを戦うまでには至っていない。それゆえ現時点での田中は、メジャーでは"エリートレベル"の投手とは考えられていないのだ。その部分を変えていくことが、ヤンキースの背番号19にとっての次なるステップになる。

 それが難しい注文であることは間違いない。シーズン中に10〜15勝をマークし、プレーオフで活躍できるだけでも上出来。DH制度があるア・リーグの強力打線、厳しい日程を考慮すれば、「ここまでの田中のパフォーマンスは十分だ」と感じるファンもいるだろう。

 ただ、これは個人的な期待感にもなるが、田中が"メジャーの集大成"というべき最高の成績を記録する可能性は、年々高まってきているように感じる。そのために必要なのは、「心技体すべての充実」と「いくらかの幸運」。30歳と年齢的に脂が乗り、精神的にも安定し、チームも強力なメンバーを揃えた2019年は、その絶好のチャンスになるのではないかと思う。

「200イニングを意識するレベルに達していない。これまではどこかで穴を空けてしまったシーズンが多いですし、まず1シーズンを通して投げないと意味がない。それが一番大事なので、今は『200イニングが目標』と言える土俵にいないです」

 14日、メジャーではまだ一度も達成していない「シーズン200イニング」について聞くと、田中からはそんな答えが返ってきた。毎年のように故障者リスト入りを経験してきた田中にとって、まずは1年をケガなく投げ続けることが目標。逆に言えば、それができれば結果はついてくる。200イニングにあと一歩届かなかった、2016年の199回3分の2を上回ることも可能だろう。

 今季のヤンキースは、アロルディス・チャップマン、デリン・ベタンセス、ザック・ブリットン、アダム・オッタビーノと、リーグ最高級のブルペンを揃えている。そんな救援陣と、強力打線に支えられて余力を残してシーズンを過ごし、得意のプレーオフに臨むことができれば......。自己、チームともに大成功という"ドリームシーズン"になるかもしれない。
 
「まずは、自分がやらないといけないことをやっておくこと。それができたら(200イニングという)数字に辿り着けると思う。今は目の前の課題をひとつずつクリアしていくことが、本当に大事だと思っています」

 三十路を迎え、これまで以上に落ち着きを感じさせるようになった右腕にブレはない。一歩ずつ進めば、いい結果が出せることはもうわかっている。あとは、さらに先に進むためのカギになる耐久力を保てるかどうか。自然体ながらも頼もしさを感じさせた田中の2019年シーズンが、もうすぐ始まろうとしている。

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