今の田中将大は真っ直ぐがエグい。プレーオフ進出へトップギア (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Image

 好成績は最近に限った話ではない。開幕直後は大量失点を喫する試合もあったが、4月23日以降に先発した14試合は7勝0敗で防御率3.12。シーズン全体でもここまで9勝2敗と高い勝率を維持している。昨シーズンから今年の春先までアップダウンが目立っていた背番号19は、持ち前の安定感を取り戻したと言っていいだろう。

「(6月9日から)故障者リストに入ったことが休養という意味でプラスに働いたのか、その期間に修正に成功したのかはわからないが、復帰後は力を入れて投げたときの速球に力がある。おかげでスライダー、スプリッターといった変化球がより生きている」

 メジャーの某チームのベテランスカウトに田中復調の理由を聞くと、すぐさまそんな答えが返ってきた。また、これは以前から主張していたことだが、「"魔球"スプリット」が代名詞になっている田中に対して「真っ直ぐがカギ」と主張する。

 今シーズン開幕直後、同スカウトにスカウティングデータを特別に公開してもらう機会があった。メジャー特有の20~80点の採点で、田中の速球のコマンドは50点、制球は60点、キレは55点で、総合評価は60点。この指標では「50点が平均、60点が優秀、70点が超優秀、80点が最高」という評価になるため、田中の真っ直ぐは平均以上とみなされていたことになる。

 一方で、そのレポートには「(田中の速球は)空振りを奪うためではなく、第3の球種として使われている」という寸評が添えられていた。たとえ及第点でも、メジャーのエース級の先発投手としては"やや物足りない"と見られていたのかもしれない。

 しかし、最近は速球に力があり「それが成功につながっている」という。実際に7月31日のオリオールズ戦では、アダム・ジョーンズ、クリス・デービスといった中軸を150キロ前後の速球で空振り三振に斬って取っている。8月5日のレッドソックス戦でも初回から94マイル(約151キロ)の速球を投げ、4回、5回にはミッチ・モアランド、アダム・ベニンテンディといった左の強打者たちから速球系で三振を奪った。

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