イチローが迫る「史上6人目の偉業」を選手もレジェンドもリスペクト (3ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Getty Images

 ちなみに、現役選手のなかにはイチローに続く選手がいないどころか、2000本以上のシングルヒットを打っている選手は誰ひとりとしていない。

 今回のスタントンや、かつてのバリー・ボンズのように、今も昔もファンはホームランに魅了されてきた。事実、オールスターでホームランダービーというイベントはあるが、バットコントロールを競うものは何もない。

 現代の野球において、バットコントロールのうまさは、ホームランを打つことに比べて評価されているとは思えないが、ポージーやゴードンをはじめ、この能力を高く評価している選手は多い。

 メジャー通算324勝を挙げて殿堂入りを果たし、現在はアトランタ・ブレーブスの地元放送で解説をしているドン・サットンは、長年、イチローの打撃技術に興味を抱いているひとりだ。

「今はまさにホームラン全盛の時代なので、ホームランを狙いにいって、思い切りバットを振ることが恥ずかしくないんだよ」

 そう言って残念そうな表情を浮かべたサットンは、こう続ける。

「もしイチローにエゴがあったら、シングルヒットで満足していると思うかい? 普通の打者ならホームランを打ちたい、強い打球を打ちたいと思うんじゃないかな。だから、手と視覚の優れた連携動作だけではないんだ。シングルヒットでも満足できるメンタリティーも大事になってくる。

 今の時代、どのチームも相手打者に対応して守備シフトを敷いている。バッターはそれを見て、笑い飛ばしながら野手のいない方向にポンと打てばいいのに、エゴがまさってしまうのか思い切りスイングする。その結果、野手のいるところに打球がいき、アウトになってしまうんだ。もしイチローに対して守備シフトを敷いたら、彼は5000本のシングルヒットを打つんじゃないだろうか。結局、イチローは技術が高すぎて、どんなシフトも通用しない選手なんだよ」

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