田澤純一秘話。マイナー時代に教わった「メジャーで生きる道」 (2ページ目)
だが、社会人野球の名門、新日本石油ENEOS(現JX-ENEOS)の一員として結果を残してきた田澤にも自負があった。
「打者がストレートを待っているのに、なぜ初球にストレートを投げなければいけないのか。スライダーを投げれば簡単にワンアウトは取れる」
それに対し、育成担当者はこう答えた。
「初球のストレートで打者より優位に立つ。これができなければ、メジャーへの道は開けない」
初球に投じるストレートの基本は外角低め。それはフォーシームでもツーシームでもいい。そこでワンストライクとするか、打ち取るか。変化球はそのあとというのが、育成システムでの教えだった。
以来、田澤は常にフォーシームを外角低めに集めた。田澤は次のように語る。
「今になって思えば、いちばん大事なことを教えてもらった」
メジャー屈指のセットアッパーに成長した今も、彼のピッチングの基本はそこにある。点差や状況によって変化球で入ることもあるが、重要な場面になればなるほど田澤が頼るボールはストレートなのだ。打者はストレートを打ち損じることで、ストレートへの意識がさらに高まる。だからこそ、変化球も生きてくるのだ。まさにシンプルな投球論と言える。
2012年以降、田澤はブルペンとして安定した投球を続けている。この2年間で112回1/3を投げ、117奪三振で与四球はわずかに17個。この夏、オールスターでア・リーグの指揮を執るのはレッドソックスのジョン・ファレル監督。レッドソックスのブルペンを支える田澤が夢の球宴に出場することは、決して夢物語ではない。
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