ポスティング問題「長期化」で一番の被害者は黒田博樹? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 もし、田中投手がドジャースに入団することになれば、リーグ屈指の投手王国が誕生することでしょう。2013年サイ・ヤング賞のクレイトン・カーショウを筆頭に、15勝を挙げたザック・グレインキー、そして柳賢振と、すでに先発3本柱は確立しています。そのうえ、4番手に田中投手を加えることになれば、2013年シーズンにメジャートップだった先発投手の防御率3.13を上回る「最強カルテット」となるのは間違いありません。1995年に野茂英雄投手がドジャースに入団したのち、ドミニカ共和国出身のラモン・マルティネス、メキシコ出身のイスマイル・バルデス、そして韓国出身の朴賛浩と、外国人投手が先発陣に顔を揃えて「国連ローテーション」と話題になりました。田中投手がドジャース入りすれば、あの時代を髣髴(ほうふつ)とさせる衝撃的なローテーションとなるでしょう。

 ヤンキースも、ドジャースも、資金力があるので、新ポスティング案が成立すれば、田中投手獲得の最有力候補になるのは間違いありません。ただ、過去の歴史を紐解いてみると、松坂大輔投手の場合も、ダルビッシュ有投手の場合も、本命と言われていたヤンキースは落札できませんでした。よって今回、田中投手のメジャー移籍先として、個人的に大穴と思っているチームがふたつあります。それは、ア・リーグ東地区のトロント・ブルージェイズと、ナ・リーグ中地区のシカゴ・カブスです。

 2006年オフ、ポスティングで松坂投手獲得に失敗したテキサス・レンジャーズは、5年後の2011年オフにダルビッシュ投手を落札して、リベンジを果たしました。そのとき、ダルビッシュ投手を獲得できず、涙を呑んだのがブルージェイズだったのです。そんな悔しい背景があるので、今回、ブルージェイズは田中投手の獲得にかなり本気のようです。また、川崎宗則選手が地元トロントで大フィーバーを巻き起こしたので、地元トロントのファンも新たな日本人プレイヤーを温かく迎え入れてくれることでしょう。

 しかも、ブルージェイズの先発事情は深刻です。昨年オフ、ニューヨーク・メッツからサイ・ヤング賞投手のR.A.ディッキー、マイアミ・マーリンズからジョシュ・ジョンソン、マーク・バーリーというエース格を獲得したにもかかわらず、先発投手陣の防御率4.81はメジャー30球団中29位。シーズンを終えてみれば東地区最下位で、ファンの期待を大いに裏切ってしまいました。また、今オフにジョシュ・ジョンソンがFAで抜けるため、ブルージェイズの先発3番手は不在です。資金は問題ないチームなので、田中投手をポスティングで落札する可能性は十分にあるでしょう。

 一方のカブスも、ブルージェイズと同じような歴史があります。2011年はダルビッシュ投手を落札できず、2012年も柳賢振をドジャースに奪われ、2年連続でポスティングに失敗しました。来シーズン、カブスは本拠地リグレーフィールド開場100周年を迎えるので、是が非でも田中投手を獲得し、チーム再建の第一歩を踏み出したいところでしょう。

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