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ポスティング新制度案を白紙に戻した、MLBの本音 (3ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 そもそもポスティングシステムは、1996年の伊良部秀輝(故人)のメジャー移籍騒動に端を発し、FA権のない日本人選手を獲得するためにルールが必要ということで作られたものだ。その際、MLB側が主眼を置いたのは、全球団に獲得する機会を平等に与えることだった。その結果、「入札」という制度を生んだ。

 だが実際は、ポスティングで選手を獲得するには予想をはるかに超える莫大な費用がかかった。一昨年オフ、ダルビッシュ有がポスティングシステムでレンジャーズに移籍したが、その時の入札額は5170万3411ドル(当時、約40億円)だった。これにプラス、選手の年俸が加わる。これを見る限り、機会均等とは言うが、資金が豊富にある球団しか参加できないのも事実である。そうなれば、このシステムの存在そのものに疑問を抱く人が出てくるのは、自然の流れといえる。

 もしMLBとNPBで合意していた11月初旬の新制度発表が現実となっていれば、田中は今ごろ入札球団との契約交渉に入っていたに違いない。だが、余計な時間を与えたことで入札制度の問題点を米国側に議論させる時間をも与えてしまった。

 入札額の高騰を抑え、修正案には規定額を設け、超過した場合はぜいたく税が貸される年俸総額へ入札額が組み込まれることを提案した。だが、大リーグ機構と選手会の協定には入札額をぜいたく税の対象としないことで合意され、この協定の期限が切れるのは2016年。それまでは、選手会から議論に応じないと言われている。

 MLBは2016年の新労使協定を視野に入れながら、まずは入札額の高騰に歯止めをかけたい。それが今回の狙いに違いない。修正案はあくまでもMLBに都合のいいものになると憶測するが、はたしてNPB及び日本の球団、選手会がその修正案を受け入れることができるのか。MLB関係者は「年内決着を目指したい」と話すが、事態は混迷を極める可能性は大だ。

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