数字が語る「上原浩治はポストシーズンに強い」 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 では今シーズン、「メジャーで最も活躍しているクローザー」と言われているふたりの選手と、上原投手の成績を比較してみましょう。そのふたりとは、現在メジャートップの47セーブを挙げているアトランタ・ブレーブスのクレイグ・キンブレルと、ロイヤルズ大躍進の原動力となっているグレッグ・ホランド(43セーブ)です。上原投手がレッドソックスのクローザーに指名されたのは、6月26日。その日から9月10日までのデータを見てみると、キンブレルは30試合に登板して24セーブ機会中24セーブ、防御率0.30、WHIP0.659。一方のホランドは、31試合に登板して26セーブ機会中25セーブ、防御率0.87、WHIP0.677。いずれも素晴らしい数字を残しています。しかし、同期間の上原投手のデータを見てみると、33試合に登板して20セーブ機会中18セーブ、防御率0.25、WHIP0.336。なんと、球界屈指の両クローザーを上回る成績を叩き出しているのです。クローザーに抜擢された期間が短いためセーブ数は少ないですが、こうやって比較すると、上原投手は今シーズン最高のクローザーと言ってもいいのではないでしょうか。

 また、今シーズンの上原投手を語る上で、見逃せないポイントがふたつあります。まずひとつは、「三者凡退」です。9月17日のボルチモア・オリオールズ戦で途絶えてしまいましたが、上原投手は8月10日以降、8セーブ連続で対戦相手を三者凡退に抑えていました。メジャーリーグ記録は、1995年に当時ニューヨーク・ヤンキースのクローザーを務めていたジョン・ウィッテランドの「9セーブ連続三者凡退」です。メジャー記録に並ぶことはできませんでしたが、賞賛すべき記録だと思います。

 なぜ、そこまで注目するかというと、監督が何よりクローザーに求めているのは、「相手を三者凡退に抑えてくれること」だからです。三者凡退に抑えるピッチングは、相手チームにあきらめムードを与えることができます。また、クローザーの球数を少なく抑えられたことで、その結果、連投での起用も可能となります。特にレギュラーシーズン終盤やプレイオフ、そしてワールドシリーズという大舞台になると、いかにクローザーの球数を抑えるかがチームにとってカギとなります。同じセーブ数をマークしても、毎回ピンチになりながら抑えるクローザーと、三者凡退で抑えるそれとは、監督の信頼感はまったく違います。上原投手は今シーズン、レッドソックスで一番信頼されている選手ではないでしょうか。

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