メジャーのトレードに学ぶ「将来性の値段」

  • 佐藤直子●文 text by Sato Noko
  • photo by Getty Images

 プレイオフ進出を狙うレッドソックスとタイガースが、ホワイトソックスを巻き込んだ大型三角トレードを成功させた。期日は7月30日。いわゆる「ノンウェーバー・トレード期限」と言われる7月31日の前夜だった。

 ノンウェーバー・トレードとは、ウェーバー手続きを経ずに、当該球団同士の話し合いのみで成立させるトレードのことだ。8月1日以降シーズン終了までにトレードを実施する場合には、対象選手に対するウェーバー手続きを行ない、獲得意思を示した球団に譲渡することになる。

ホワイトソックスからレッドソックスに移籍したサイヤング賞投手のジェイク・ピービホワイトソックスからレッドソックスに移籍したサイヤング賞投手のジェイク・ピービ

 この場合、例えば、チームAとチームBによるトレード交渉が水面下で成立していたとしても、ウェーバー手続きの過程で、第3者のチームCからの横やりが入り、トレードが破談になる場合もある。それというのも、複数球団が獲得意思を示した場合、対象選手が所属するチームと同リーグで成績の悪いチームに優先権が与えられるからだ。当該球団同士がより満足いくトレードを、余計な心配なしに成立させるためには、7月31日午後4時(米東部時間)までに交渉をまとめる方が得策ということになる。

 レッドソックス、タイガース、ホワイトソックスの三角トレードに話を戻そう。急転直下で起きたこのトレードは、3者の思惑を見事に満たすものだったが、正直なところ、誰もが度肝を抜かれた。文字通りの「ハイリスク・ハイリターン」である。

 先発投手の補強が急務だったレッドソックスは、ホワイトソックスから2007年のサイ・ヤング賞投手、ジェイク・ピービ(32歳)を獲得。その代わり、大事に育てて今季ついに花咲いた新人王候補遊撃手のホセ・イグレシアス(23歳)をタイガースへ送った。マイアミの診療所を発端とする禁止薬物使用スキャンダルに関連し、正遊撃手ジョニー・ペラルタが出場停止処分になることが確実なタイガースは、イグレシアスを獲得し、補強に成功。そして、その代償として、若手有望外野手のアビサイル・ガルシア(22歳)をホワイトソックスへ送り出した。今季の成績低迷に伴い、来季からチーム立て直しを図りたいホワイトソックスにとって、ガルシアは間違いなく核に据えられる逸材だ。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る