岩隈久志がダルビッシュ有より勝っている点 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 このような攻撃的なピッチングをしているからこそ、今シーズンの岩隈投手は長いイニングを投げられているとも言えるでしょう。今シーズンはフルカウントまで引っ張ることなく、少ない球数で相手を討ち取っているケースが多いのです。その結果、10試合の先発のうち8試合で「6イニング以上3失点以内」のクオリティスタートを記録。しかも、10試合のうち100球以上投げたのは2度だけで、ほぼ毎回90球前後で試合をまとめ上げているのです。5月16日のニューヨーク・ヤンキース戦では、7イニングを2失点に抑え、球数はわずか89球。そのまま投げ続けても十分に完投できるペースでした(味方が大量得点を奪っていたため降板)。ちなみにダルビッシュ投手は、9試合の先発のうち100球以上投げたのは8試合。5月6日のボストン・レッドソックス戦では127球、そしてジャスティン・バーランダーと投げ合った5月17日のデトロイト・タイガース戦では130球でした。

 過去の歴史を振り返ると、多くの日本人投手を苦しめたのが、この「球数の多さ」です。ボールやマウンドの傾斜、そしてストライクゾーンなど、日米の違いに戸惑うことで球数が増え、その結果、勝ち星につながらないことが多いのです。5イニングで100球ほどに達し、降板せざるを得ないシーンは過去何度も見ています。

 例を挙げると、松坂大輔投手(インディアンズ傘下3Aコロンバス)は2007年から2012年までの6年間で、実に1イニング平均17.40球を投げていました。また、今年のダルビッシュ投手は1イニング16.24球(リーグ22位)。平均16球は特に多いわけではないのですが、そんな中、岩隈投手の平均14.15個は驚異的な数値と言えます。

 このように少ない球数で結果を残した代表的なピッチャーといえば、「精密機械」と呼ばれたグレッグ・マダックス(元アトアランタ・ブレーブスなど)でしょう。抜群のコントロールでサイ・ヤング賞を4年連続で受賞(1992年~1995年)。マダックスは常に、「いかに少ない球数で抑えるか」を考えていたピッチャーで、現役時代にこのような言葉を残しています。「ピッチャーにとって一番、過大評価されている記録は『奪三振』である。(本来は)27個のアウトを27球で取るのが最高だ」。これが、マダックスの目指した「究極のピッチング」なのです。

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