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三振を奪いまくるダルビッシュに全米中が熱狂するワケ (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 そして「ビッグユニット」ことランディ・ジョンソンは、言わずと知れた1990年代以降を代表する奪三振王でしょう。1993年シアトル・マリナーズ時代の308奪三振をはじめ、その後、1998年から5年連続でシーズン300奪三振以上を記録。さらに2001年のアリゾナ・ダイヤモンドバックス時代には、歴代3位となるシーズン372奪三振を樹立しました。あまりにも驚異的な奪三振ペースだったので、1973年に当時カリフォルニア(現ロサンゼルス)・エンゼルスのノーラン・ライアンが記録した歴代1位のシーズン383奪三振を抜くのではと騒がれたほどです。スリークォーターから放たれる最速100マイル(時速約161キロ)以上のストレートと、大きく横に変化する高速スライダーで、9度の奪三振王に輝きました。

 2002年以降、シーズン300奪三振を記録した選手は誕生していません。ダルビッシュ投手がシーズンで200イニングを投げたとしても、よほどの奪三振率を残さないと、そこに到達するのは難しいでしょう。しかし、テキサスという土地でプレイしていることを考えると、つい期待してしまいます。というのもテキサスという場所は、アメリカ50州の中で、「最も三振にこだわりのある土地柄ではないか」と思うからです。

「史上最高の速球王」と呼ばれ、歴代1位の通算5714奪三振を記録したノーラン・ライアンから始まり、「ロケット」の異名で活躍したロジャー・クレメンス、さらに1998年シカゴ・カブス時代に新人で1試合20奪三振のメジャータイ記録を樹立したケリー・ウッド、さらにメジャーを代表する速球派として名を馳せたジョシュ・ベケット(現ロサンゼルス・ドジャース)……。他にも名前を挙げればキリがないほど、テキサスという土地は多くの豪腕ピッチャーを輩出しているのです。

 驚異的な奪三振ペースに盛り上がるメディアに対し、ダルビッシュ投手は「(野球は)三振を奪う競技ではない」とクールなコメントを残していました。しかし、テキサスのファンには、「三振こそ野球の醍醐味」と考えている人が多いと思います。三振を奪いまくるダルビッシュ投手のピッチングに、アメリカ人が惚れ込むのも当然でしょう。はたして今シーズン、どれだけ三振を積み重ねていくのでしょうか。当分、ダルビッシュ投手に送られる熱視線は収まりそうにありません。

著者プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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