【WBC】冷淡なアメリカのメディア&ファンと、WBCのこれから (2ページ目)

  • 冷泉彰彦●文 text by Reizei Akihiko
  • photo by Getty Images

 2面、3面もカレッジ・バスケットボールの記事で占められ、4面はNBA。WBC敗退のニュースは5面になってやっと出てくるという有り様だった。

 ところが、驚くべきことにこの5面では問題のデビッド・ライト選手のケガの状態が思わしくなく「開幕戦に間に合うかは微妙だ」というニュースがトップであって、チームUSAがプエルトリコに負けてWBCから敗退したというニュースはその下なのだ。

 どうして「ライト選手のケガ」の状態の話が、チームUSA敗退よりも大きな扱いになるのかというと、同選手は他でもないニューヨーク・メッツの看板打者だからだ。ニューヨークの野球ファンの関心というのは、ライト選手のケガについて「そのためにWBCからライト選手が離脱してしまい、それがチームUSAの負けにつながって残念だった」というニュアンスではなく「メッツの開幕に間に合うか?」という文脈で語られた。その話題の方がWBCの結果より大事というわけだ。

 最後がそんな具合だから、チームUSAが戦っていた期間の扱いもお粗末極まりないものだった。例えばニューヨーク・ヤンキースのファン向けの報道において、今回のWBCというのは、テシェイラ選手が代表チームに合流して練習中にケガをしたという事件が圧倒的に大事であり、チームUSAに対する関心は薄かった。また史上最高の救援投手といわれるマリアノ・リベラ投手が引退を発表したというニュースが野球関係の話題を独占した日には、WBCの報道は完全に隅に追いやられていたのである。

 WBCに関してもっと冷淡な街もある。ボストンの地元紙ボストン・グローブ(電子版)などは、1月の段階で「WBC参加によるレッドソックスへのインパクトは軽く済む見込み」という記事を載せている。ピーター・アブラハムという記者の書いたものだが、WBCへの参加選手はビクトリーノ選手とアセベド選手だけに留まり、レッドソックスとしては「問題ないだろう」ということが強調されていた。ボストンの野球ファンにとっては、2009年に松坂投手がWBCで活躍後した後に故障を繰り返したことの後遺症が根深いのかもしれない。

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