【MLB】ヤンキース移籍後のイチローが見せる「笑顔」のワケ (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by REUTERS/AFLO

 これまで数々のメジャー記録を塗り替えてきたイチローだが、新しい環境に飛び込めばそこでは新参者になる。ましてや、それがメジャーで一番の伝統と歴史を誇る名門ニューヨーク・ヤンキースとなればなおさらだ。

 野手ではチーム最年長となるイチロー。しかし、ヤンキースにはジーターやアレックス・ロドリゲスといったメジャーでも屈指の実力を誇る選手たちがおり、チームの中で気遣いをみせるイチローの姿を見るのも面白い。

 7月25日の試合では、ヤンキース入団後はじめて1番打者で出場し、打順について聞かれたイチローは、「(1番には)ジーターさんがいらっしゃいますから(笑)。それはもう、たまに入れていただければ......」と謙遜した。

 マリナーズ時代はダグアウトの真ん中に座り、セーフコフィールドのベンチには穴を開けたイチロー専用のバット置き場まであった。誰もがイチローに気遣い、その聖域には近寄れなかったが、ヤンキースではベンチの一番端に座っている。ヤンキースタジアムなら、一番ライト寄りのところだ。

 そしてピンストライプ初披露となった27日の試合では、満員のファンから大歓迎を受けて、「そりゃ、ありがたいですけど、『あまりやらないで』と思っていました。あんまり大げさにしないでって。最初ですから」とイチローは謙虚に語った。

 特別な存在からチームのワンピースへ、イチローは今、ピンストライプに染まろうとしている。そしてニューヨークでの決意を語った。

「敵として来ていたというのは、スタンドから来る声というものはなかなか厳しいものでしたけれども、このピンストライプのユニフォームを着て、僕にとってはすごくタフだった相手が、今度はものすごい大きな味方になってくれるように、僕がやらなくてはいけないと思います」

「やらなくてはいけない」――この言葉が胸に響いた。

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