【MLB】川崎宗則のルーティン。代打・代走・第3捕手の忙しすぎる1日 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 川崎の打撃練習は、その試合で控えならいちばん最後の4組目。まだバッティングには時間がある。ここで川崎はいつも走塁練習を始めるのだが、ただベースを回るだけではない。1球1球状況を想定し、二塁ベース、三塁ベースへと行き、スライディング練習までする。メジャーの試合前練習で、ユニフォームを真っ黒にして練習をしている選手は、間違いなく川崎だけだろう。

 5月21日現在(現地時間)、川崎は6試合代走で起用されている。それもいつも僅差の終盤ばかり。1点を争う場面で切り札として投入されるスペシャリストというわけだ。だから練習であろうと、試合と同じような気持ちで取り組んでいるのだ。そんなひたむきな姿勢があるからこそ、代走で起用されヒーローにもなった。

 5月7日、本拠地でのタイガース戦。同点の9回裏、一死三塁の場面で三塁走者は代走で起用された川崎。ここでジェイソの一打は浅いライトフライ。川崎はハーフウェイから素早く戻りタッチアップし、ライトからの返球を受ける捕手が少しだけ三塁側に動いたのを見て、瞬時にインフィールド側から滑り込み、見事な身のこなしで捕手のタッチをかわし、サヨナラホームイン。

「体に任せました」と多くを語らなかった川崎だが、「経験とセンスが融合したスーパープレイ。なかなかできない。しびれるプレイですね」と、イチローは大絶賛した。

 さらに正捕手のオリボが故障者リスト入りし、今では緊急時の第3の捕手としてスタンバイする。マイミットも取り寄せ、ブルペンで投手の球も受けている。すべては「For the team」の精神から。首脳陣はそんな川崎の姿勢を「真のプロフェッショナル」と高く評価する。

 川崎自身も"スーパーサブ"としてのプライドを持ち、常に前を向き試合に備える。もちろん、このまま控えに甘んじるつもりなど毛頭ない。

 その時のために、川崎は今日も準備を怠らない。

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