【MLB】ブルワーズ青木宣親がようやく取り戻した『あの感覚』 (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 朝倉宏二●写真 photo by Asakura Koji

 キャンプの序盤に苦しんだ理由ははっきりしていた。明らかな打ち込み不足だった。メジャーの打撃練習の時間は短い。日本のように存分に打ち込むことは不可能だ。その不足を補うために、青木は宿舎近くの公園でバットを振るなどさまざまな工夫をしてきたが、それでも「自分のスイングができていない。まだちゃんと振れていない」と認めざるをえなかった。

 青木の打撃練習を見た人なら、三塁線を測ったように抜いていく職人芸を覚えているだろう。あれは偶然ではなく、じつは狙って打っていて、その技術は本人も自信を持っていた。しかし、メジャーではその打球がなかなかフェアゾーンに入らない。

「あそこには狙って打てていたんですが......もどかしかったですね。でも今は、日本にいた時と同じ感覚を取り戻しました」

 13日のマリナーズとの試合のあとで、そんな感想を漏らしていたが、その後の試合を見ると、もどかしさはだいぶ解消されてきたようだ。

 ライバルは強力だが、彼らにも問題がないわけではない。ハートはひざを手術する前から一塁へのコンバートが噂されていたように守備に不安があるし、モーガンは精神的にムラがあり、昨シーズン終盤のような活躍がシーズンを通してできるか不安視する声もある。青木のつけ入る余地は十分にあるのだ。

 早稲田大に入った時も一般入試だったし、プロに入った時も、評価は早大チームメイトの鳥谷敬(阪神)に比べると気の毒なくらい低かった。それがプロ2年目にいきなりシーズン202安打して一流選手の仲間入りを果たした。逆境からのスタートは青木にとって「お約束」みたいなもの。三塁線をきれいに抜いていく本来の当たりが増えてくれば、レギュラーポジションを奪い取ることも、決して不可能ではない。

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