2012.03.03

【MLB】『3番イチロー』は80年代カージナルス旋風の再来か?

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

「3番イチロー」が成功すれば、マリナーズは今季、メジャーに革命を起こすかも 1980年代、セントルイス・カージナルスの本拠地ブッシュ・スタジアムは外野が広く、グラウンドも人工芝だったため、ホワイティ・ハーゾグ監督は球場の特性を生かしたスピード重視の戦術を選びました。1番から8番まで俊足選手をずらりと並べ、機動力野球で他球団に対抗しようと考えたのです。

 その象徴的なシーズンとなったのが1985年です。マイナーにいたビンス・コールマンを1番に抜擢し、コールマンはメジャー新人記録の110盗塁を記録。さらに2番のウィリー・マッギーは打率.353という高打率で、ナ・リーグの首位打者とMVPを獲得しました。

 そして3番を打ったのが、トム・ハーという選手。ハーは1979年にカージナルスでデビュー以来、4年続けてホームランが0本で、3番に起用された前年の1984年も、わずか4本という打者でした。しかし1985年、ハーゾグ監督が3番に抜擢すると、自己最多の8本塁打を記録し、しかも打率.302ながら110打点も叩き出したのです。コールマンやマッギーが多く出塁したことも要因ですが、打率3割・8本塁打で110打点も稼いだのは、ハーの勝負強さの賜物でしょう。ひとケタのホームラン数で100打点の大台を突破したのは、1950年のジョージ・ケル(デトロイト・タイガース)以来、35年ぶりの快挙です。

 その結果、カージナルスはナ・リーグで下から2番目の本塁打数(87本)ながら、メジャー断トツの314盗塁を決め、ナ・リーグ1位の747得点をマーク。世界一は逃したものの、リーグ優勝を果たし、黄金時代を築きました。メジャーリーグ史に残る機動力野球は『ホワイティボール』と呼ばれ、一世を風靡したのですが、この雰囲気が、今年イチロー選手を3番に起用予定のシアトル・マリナーズとダブるような気がするのです。

 その前に、『3番』という打順について少し解説したいと思います。4番に重きを置く日本と違い、アメリカでは最高のバッターが3番を打ちます。古くはタイ・カッブやベーブ・ルースに始まり、歴代1位の通算762本塁打を誇るバリー・ボンズ、現役では最も三冠王に近い選手と評されるアルバート・プホルス(ロサンゼルス・エンゼルス)、2010年ア・リーグMVPのジョシュ・ハミルトン(テキサス・レンジャーズ)、打撃主要3部門を制したミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)、2年連続ア・リーグ本塁打王のホセ・バティスタ(トロント・ブルージェイズ)と、みんな3番を打っています。

 3番を任された彼らは、出塁したチームメイトを本塁に返し、かつ自分も次の得点圏に進まないといけないので、高い出塁率と長打率を兼ね備えたバッターでなければなりません。よって、OPS(出塁率+長打率)という数値が注目されているのですが、前述した選手はみんな高いOPSを記録しています。プホルスは通算でOPS1.037を誇り、昨年のOPSランキングも、1位バティスタ(1.056)、2位カブレラ(1.033)と、超一流バッターの証といわれている『10割』以上を残しています。