【夏の甲子園2025】プロ注目左腕の未来富山・江藤蓮がまさかの8失点KO それでもスカウトの評価が揺るがないワケ (3ページ目)
報道陣から進路について問われた江藤は、以前までの強いプロ志望からトーンダウンした様子をうかがわせた。
「ふがいないピッチングをして、このままでは上では通用しないと感じました。まだ期間はあるので、体づくりをするなかで最終判断をしたいと考えています」
大舞台で結果を残せなかったショックが、ありありとうかがえた。それでも、プロスカウトのなかには「評価する球団は必ずある」と断言する声も聞こえてきた。秋にかけて江藤がどんな決断をするのか、再び注目されそうだ。
【拾えなかった甲子園の土】
最後に「もし間違っていたら、違うと言ってください」と前置きしたうえで、江藤に聞いてみた。4月の高校日本代表候補合宿で見せたボールと比べると、甲子園でのボールは本来のパフォーマンスではなかったのではないか。すると、江藤はうなずきながら、こう答えた。
「合宿の時は真っすぐも、変化球の質も、制球もよかったんです。春から夏にかけて、多少は上がったところもあるんですけど、状態を仕上げきれなくて......。ストレートの質も、変化球のキレも、合宿の時のほうがよかったです」
この日、江藤は試合後に甲子園の土を拾わなかった。正確に書けば、「拾えなかった」。アイシングに時間を費やしたため、土を拾う時間がなかったのだ。
「時間が合えば拾いたかったです」
江藤はそう言ったが、これが江藤の野球人生における最後の甲子園マウンドとは思えない。
いずれ近い将来、江藤蓮は甲子園での借りを返しにくるはずだ。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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