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【夏の甲子園2025】巧みなリードで「格上」健大高崎を翻弄 京都国際の捕手・猪股琉牙「ネットでは『健大が勝つ』と言われていたので...」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 そして、青栁監督は続けて重要な発言をしている。

「今日は左バッターがキーになります。右バッターはチェンジアップがなかなか打ちづらいので、左バッターへのスライダーのほうが、まだ機はあるかなと。(1、2番打者の)石田(雄星/2年)、加藤(大成/3年)が出塁できるかですね」

 群馬大会でベンチ外だった背番号19の向井翔(3年)を7番・左翼で先発起用したのも、向井が左打者だから。一般的に「左対左」は相性が悪いとされるが、右打者の外角に逃げていくチェンジアップを持つ西村の場合、右打者のほうが攻略困難なのだ。

【練習試合での苦い経験が教訓】

 捕手目線で、西村のチェンジアップはどう見えるのか。女房役の猪股に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「キャッチャーから見ても、バッターから見ても、1回ボールが止まっているように見えます。受けていても、体が前に出そうになります」

 1回表の立ち上がりから、ハイレベルな攻防が繰り広げられた。捕手の猪股はしきりに打者に近寄ってから、ミットを構える。積極的にインコースを攻めたのだ。

「健大高崎の映像を見て、インコースに弱い部分があると感じていました。当てても仕方ないと割りきって、インコースを要求しました」

 ただストレートを投げ込むだけでなく、左打者のインコースにスライダーを投げ込むシーンも見られた。打者からすると体の近くから曲がってくるだけに、体が早く開いた状態で打たされる。健大高崎の1番打者・石田は、インコースのスライダーで二塁ゴロに打ち取られている。

 この対左打者へのスライダーの攻めは、練習試合での苦い経験が教訓になっていたと猪股は語る。

「健大高崎の左バッターには、西村のチェンジアップがあまり通用しなかったんです。加藤君にはチェンジアップでホームランを打たれてしまって。だからインコースの真っすぐだけでなく、スライダーを使おうと考えていました」

 しかし、猪股にはひとつ気がかりなことがあった。

「初戦ということもあってか、西村のコントロールが少し荒れていました」

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