【夏の甲子園2025】巧みなリードで「格上」健大高崎を翻弄 京都国際の捕手・猪股琉牙「ネットでは『健大が勝つ』と言われていたので...」 (4ページ目)
ちなみに、小堀は1打席目に三振を奪われた内角のスライダーについても、「頭にはありました」と明かしている。
「春に代表合宿(高校日本代表候補強化合宿のこと)でブルペンに入らせてもらった時、西村君のボールを受けているんです。チェンジアップだけじゃなく、スライダーのキレもすごくて、『レベルが高いな』と思っていました。1打席目も当然、『インスラもあるな』と頭にあったんですけど、とらえられませんでした」
猪股だけでなく、小堀も西村のボール捕球経験者だったのだ。せっかくなので、小堀にも西村のチェンジアップがどう見えるのかを聞いてみた。
「右バッターに向かっていくような感じから落ちていくので、特殊ですよね。曲がり幅も、落ち幅も、どっちも大きいボールでした」
その後、試合は京都国際が逆転に成功。4回裏に勝ち越しの適時打を放ったのは、またもや猪股だった。
4回以降も、猪股は好リードで西村を支え続けた。健大高崎打線が低めのチェンジアップを捨てていると見るや、即座にカーブを交えて翻弄。西村も尻上がりに状態を上げ、4回以降の6イニングを被安打2に封じた。
下馬評を覆した猪股は、こんな感想も語っている。
「ネットでは『健大が勝つ』と言われていたので、勝ててよかったです」
あるプロスカウトは「京都国際のキャッチャーはセンス抜群だね」と、猪股の捕手としての才覚を絶賛した。大一番を乗り越えた京都国際が今後も勝ち上がれるかどうかは、西村だけでなく、捕手の猪股もカギを握りそうだ。
京都国際の次戦は16日、好左腕・広瀬賢汰(3年)を擁する尽誠学園(香川)との3回戦を戦う。
好ゲームの裏には、好捕手の存在がある。甲子園観戦の折には、捕手たちの思考に思いを馳せてみてはどうだろうか。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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