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【夏の甲子園2025】巧みなリードで「格上」健大高崎を翻弄 京都国際の捕手・猪股琉牙「ネットでは『健大が勝つ』と言われていたので...」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 厳しいコースを突くだけに、少しでもズレればボール球になってしまう。西村は2番の加藤、4番の栗原朋希(3年)と左打者に四球を与える。二死一、二塁の場面で、5番の小堀を右打席に迎えた。

 この場面で、猪股のリードが冴え渡った。1ボールから4球連続してチェンジアップを要求。小堀から空振りを奪うなど、カウントは3ボール2ストライクになった。

 最後はチェンジアップか、ストレートか。試合を見ている誰もが、そう予想する場面だったに違いない。だが、猪股は意外な球種を選択する。

「インコースにスライダーを要求しました。(小堀は)真っすぐに強いバッターなので、当たったら飛んでしまいます。チェンジアップも、さすがにこれだけ続けたら、目が慣れてくるので」

 膝元に落ちていくスライダーに、小堀のバットは空を切る。猪股にとっては、会心のリードだった。

 難しい立ち上がりを乗り切った京都国際は、1回裏に2点を先取する。2点目を叩き出したのは、6番・猪股の適時中前打だった。

【相手捕手が語る西村一毅のチャンジアップ】

 しかし、健大高崎の小堀も黙ってはいなかった。2打席目となる3回表、二死満塁のチャンスで、再び打席に入る。

 1ボール2ストライクと追い込まれた時点で、小堀は動いた。バントの構えからバットを引いてヒッティングする、バスター打法に切り替えたのだ。その狙いを聞くと、小堀はこう答えた。

「1打席目のチャンスを潰してしまって、『来た球を素直に打ち返そう』と思って、バスターを選択しました」

 小堀のバスター打法を見た猪股は、「追い込んでから打ち方を変えられると、難しいな」と厄介に感じていたという。

 その直後、西村はスライダーを引っかけ、暴投となって1点を失う。局面は二死二、三塁に変わった。

 カウント3ボール2ストライクから、西村が投じたチェンジアップに小堀が食らいつく。打球はゴロで三塁線を抜け、2人の走者が生還。一時は逆転となる2点適時二塁打になった。小堀は「きれいなヒットじゃないけど、何とかランナーをかえせてよかった」と安堵した。

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