【高校野球】戻らなかったストレート 横浜に敗れた東海大相模・福田拓翔が高校最後のマウンドで見せた「エースの意地」 (4ページ目)
図らずも、選手からも監督からも「充実」というフレーズが口をついた。福田は故障から復帰するまで、苦しみに支配されたわけではなかった。
9回表に投げ込んだ130キロ台のストレートは、たしかに横浜打線に通用していた。そのことを尋ねると、福田は清々しい表情でこう答えた。
「佐藤からずっと真っすぐのサインが出ていたので、『最高のストレートを投げて、攻撃につなげよう』と思っていました。見ている人からしたら、スピードは物足りなかったと思うんですけど、最後のストレートはベストピッチだと思っています」
今後の進路を聞かれた福田は、「原先生や親と話し合って決めたい」と明言を避けている。今夏の投球内容を考えると、プロスカウトから高い評価を勝ち取るのは難しい。その一方で、佐藤が語ったように復調途上という事情もある。今後、福田は難しい選択を迫られることになりそうだ。
福田拓翔は、こんなものではない。おそらく、東海大相模に関係する人間のほとんどがそう感じているはずだ。そんな仲間たちに、次のステージでどんな姿を見せたいか。最後に尋ねると、福田はこう答えた。
「この3年間、みんなと本当に苦労して、助けられてきました。みんながいたから、今の自分がいると思っています。だからこそ、今まで以上にいいボールを見せて、もし見てもらう機会があったら絶対に抑えてやろう。いいピッチングをしていきたいと思っています」
福田の高校野球は終わった。だが、その野球人生まで終わったわけではない。いずれ近い将来、福田のストレートは復活する。東海大相模のメンバーはみな、そう信じているはずだ。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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