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【高校野球】戻らなかったストレート 横浜に敗れた東海大相模・福田拓翔が高校最後のマウンドで見せた「エースの意地」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 さらに、佐藤は貴重な証言をしてくれた。福田の状態は、夏に向けて少しずつ上向いていたというのだ。

「自分は秋が終わったあとに捕手になったんですけど、その頃はストレートで空振りが取れていました。春にケガをした直後は、腕を振るのが怖かったのか、ストレートで空振りやファウルを取れなくなっていました。でも、だんだん腕が振れるようになってきて、今ではストレートで空振りやファウルを取れるようになっています。あとは出力面だけだったので、もう少し時間があれば......と思ってしまいます」

【最後のストレートはベストピッチ】

 登板後のケアや検診を終え、報道陣の前に姿を現した福田に、まずは聞いてみた。今日のストレートの走りについて、どう感じているのかと。

「今日もスピードは出ていなかったですけど、目の前のバッターを打ち取ろうということだけに集中していました。変化球が多かったんですけど、最後の回は佐藤が真っすぐのサインをたくさん出してくれて。打ち合わせをしたわけじゃなかったんですけど、たぶん佐藤は『信じてきた真っすぐをやりきれよ』と言いたかったんじゃないかと思います。最後は信じて、真っすぐを投げられました」

 ストレートの質を追求してきた人間が、質のいいストレートを投げられない。その苦しみは、想像を絶する。何度も悔しく、もどかしい思いをしてきたのではないか。そう尋ねると、福田は少し考えてからこう答えた。

「なかなか思っているボールとはほど遠くて、本当に正直『投げたくない』という期間もありました。でも、原先生とケガをしてからの2、3カ月、一緒にやってきたのが、自分のなかで本当に楽しくて。普段の生活から、人一倍厳しいことを言われてきましたけど、それは自分に対する期待と、『チームを変えろ』というメッセージだと受け取っていました。ケガをしたからこそ、いろんなことを考えられたと思いますし、原先生を絶対に胴上げしたいという思いがありました。この2、3カ月は、自分のなかでは充実していたと思います」

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