【高校野球】戻らなかったストレート 横浜に敗れた東海大相模・福田拓翔が高校最後のマウンドで見せた「エースの意地」 (2ページ目)
この時点で3対11。強力な横浜投手陣の実力を考えれば、絶望的と言っていい点差だった。
8回裏の東海大相模の攻撃が0点に終わった直後。真っ先にグラウンドへと飛び出していったのは、福田だった。
相変わらず、ストレートは130キロ台。それでも、4点を失ったことで吹っ切れたのだろうか。130キロ台のストレートは、横浜打線のバットを押し返すようになった。ストレート中心の配球で二死を取り、最後は横浜の8番・駒橋優樹を遊撃ゴロに抑える。福田は泰然と三塁側ベンチへと戻ってきた。
ベンチ前で出迎えた東海大相模の原俊介監督が、福田の左肩に手を置いて称えるようなアクションを見せる。結果的に、これが福田の高校最後のマウンドになった。
【もう少し時間があれば...】
勝利した横浜の選手たちが歓喜に包まれるのと対照的に、三塁側ベンチでは東海大相模の選手たちの慟哭が響いていた。
もし、福田が本来の姿を見せていれば......。
東海大相模を応援するファン、関係者の多くは、そう思ったのではないか。だが、当事者たちの受け止め方は違った。
表彰式が終わったあと、原監督は福田についてこんな感想を語っている。
「ケガでコンディションが低下することは、スポーツではあることなので。でも、ケガをする前も、した後も、どういうプロセスを踏むかが大事だと思います。彼にとってはいい経験になったでしょうし、私にとっても、夏に向かうまでの彼との時間は充実したものになりました」
そして、バッテリーを組む捕手の佐藤惇人(あつと)は、こう断言した。
「今、彼が持てる力を出しきってくれたと思います。チーム内に福田を責める人間はひとりもいません」
右ヒジを痛める前も、痛めた後も、福田はチームのエースとしてふるまってきた。その背中を見てきたからだろう。佐藤はこう続けた。
「ボール自体は、いい時のものには戻らなかったかもしれません。でも彼自身、ケガをしてから投げられなくて、悔しい思いをしていました。夜遅くまでシャドウピッチングをして、甲子園に行くため、日本一になるための努力をしていました。そんな姿をみんなが見ています。甲子園には行けなかったけど、福田が相模のエースでよかったです」
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