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【高校野球】公立の雄・東筑の青野浩彦監督は「常識を疑う」 原点は甲子園ベンチでのドリンク飲み放題 (3ページ目)

  • 内田勝治●文 text by Uchida Katsuharu

「選手たちはランニングじゃなくて野球をしにきています。東筑は進学校で授業も大変なので、走らせる時間がもったいないんです。冬でも走り込みはまったくやらず、年中、野球をやっています。冬の間、まったく投げずに、春にかけて肩をつくり直すのが嫌なんです。筋トレで体が変わると可動域とかも変わってしまい、そこから肩をつくり直すとケガの原因にもなるので、ずっとボールを使わせています」

【東筑の監督として4度の甲子園】

 母校の改革はすぐに、そして思わぬ形で結果として表われる。就任1年目の夏こそ初戦敗退だったが、翌1996年夏、東福岡と福岡大会決勝で激突した。1点を追う9回一死満塁から平凡な遊ゴロに、誰もが併殺で試合終了と思った次の瞬間、遊撃手が二塁へ悪送球。一気に二者が生還し、逆転サヨナラで9年ぶり5度目の夏の甲子園の切符をつかんだ。

「打った瞬間、『あっ、ゲッツーだ』と。『いい試合でよかったな』と思いましたね。そしたら悪送球で......。何であんなショートゴロを打ちよるんでしょうね(笑)」

 毎試合のように打順を変える「猫の目打線」で甲子園でも1勝し、自身の現役時代には途中までしか流れなかった1分43秒もある校歌をフルコーラスで歌いきることができた。三井由佳子さんが史上初めて女子マネジャーとしてベンチ入りしたことでも話題となった。

「三井の横にいたらテレビに映ると思っていつも横にいました(笑)。試合ではやっぱり調子のいい選手を使うべきだと思っているし、4番でも調子が悪くて打てないんだったら、下位で気楽に打たせたほうがいい。経験のなかで固執してもしょうがないなと思っています」

 1998年春の選抜に出場したあと、九州国際大付など私学の台頭もあり、長らく甲子園からは遠ざかり、2010年に鞍手高校へ異動となる。甲子園出場経験がない鞍手の打力を伸ばすために技術本を買い漁り、独学で勉強して指導に生かした。

「理想はバットの動きと腰の動きを平行にすること。アッパースイングなのに腰は地面と水平に回っていたらバットはスムーズに出ないし、力が入りません。今でもそれを基本に教えています」

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