検索

選抜高校野球優勝の横浜・奥村が無名左腕の球に「えぐっ!」と声をあげた 江藤蓮とは何者? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【甲子園経験の強打者を圧倒】

 今回の強化合宿参加選手のなかには、すでに進路を大学・社会人に定め、プロ志望届を提出しない意向の有力選手も多かった。だが、江藤は現段階で「プロに行きたい」と語っている。バックネット裏で見守ったスカウト陣の熱量も必然的に高くなった。

 自身もサウスポーだったDeNAの河原隆一プロスカウティングディレクターは、江藤についてこんな感想を語っている。

「全身を使えるフォームで、ボールにキレがあるし、コントロールもいい。体ももっと強くなりそうですね。すごく楽しみな、いい素材だと思います」

 この日、江藤が対戦した6打者は、すべて甲子園出場経験がある強打者だった。ドラフト候補に挙がる赤埴幸輝(あかはに・こうき/天理)をショートゴロ、フリー打撃でサク越え弾を連発した田西称(たさい・とな/小松大谷)はセカンドゴロに打ち取っている。江藤は「意外とストレートで差し込めるんだなと実感しました」と語った。

 長野県須坂市で生まれ育ち、高校は誘いを受けて未来富山へ。通信制の学校で、野球に打ち込んでいる。江藤は冗談めかしてこう打ち明けた。

「野球しかしてきてないので、こうして取材してもらっても、ちゃんと日本語を使えているのか心配なんです」

 江藤自身はそう言うものの、技術論に対する受け答えを聞く限りは、野球に対する関心の深さを感じた。

 今春、未来富山はチーム内に不祥事があり、関東遠征が取りやめに。4月8日に下される予定の日本学生野球協会からの裁定を待つ状況だ。ただし、江藤自身は不祥事に関与していないため、今回の強化合宿に参加している。

 目標とする高卒でのプロ入りに向けて課題を聞くと、江藤はこう答えた。

「支配下で指名されるには、マウンド上での振る舞いや、もっと球の精度を高めないといけないと思っています」

 目標とする選手像は宮城大弥(オリックス)だという。

 今回の強化合宿は一般非公開で実施されたため、江藤のパフォーマンスを見られたのはごく一部の関係者だけだった。だが、いずれ江藤蓮の名前が全国区になる日はきっとくる。そんな予感がする。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

フォトギャラリーを見る

2 / 2

キーワード

このページのトップに戻る