揺れる高校野球 もし「甲子園開催の7イニング制」「ドーム開催の9イニング制」の二択を迫られたなら...? (3ページ目)
プロが使用しているドーム球場に、そのような環境がないとは思えない。ぶつかる問題としては使用料だろうが、中継の放映権料を徴収するシステムにするなどやり方はあるはずだ。既存の放送局が放映権料を払わないのであれば、代わりに手をあげる動画サービスはあるだろう。高校野球をビジネスにするという話ではなく、選手、関係者の健康を守るために資金をやりくりすることは、運営者として当然の役目である。
7イニング制に踏み切る理由は、なにより試合時間の短縮である。
「足をつる選手は減るでしょうね」
そう語るのは、かつて高校日本代表でコーチを務め、世界大会で7イニング制を経験したこともある智辯学園の小坂監督である。
一方で、先述した大阪桐蔭のように、総合力のあるチームは「9イニングを戦ってこそ」の思いはあるはずだ。しばらくつば迫り合いは続きそうだが、やがて以下の究極の選択を迫られるかもしれない。
・ドーム開催の9イニング制
・甲子園開催の7イニング制
「個人的には、甲子園での7イニングがええかな。憧れというよりは、やはり土のグラウンドがいい。開閉式の屋根付き甲子園ができれば一番やと思うけど、そんなこと言い出したらキリがないですからね」
先の選択に対して、智辯学園の小坂監督からはそんな答えが返ってきたが、ほとんどの指導者は答えに窮するだろう。
だが選択を迫られた時、意外と答えは割れるのではないかと見ている。というのも、甲子園に何度も出場している学校は"甲子園開催"を切望するだろうが、一般的な学校の多くの指導者からは、選手たちがいい環境でプレーすることを第一に求めている声が多い。
当然、この問題は簡単に決められることではないし、慎重な議論が必要である。そこで今回試験的に導入された"朝夕2部制"が、非常に大きな役割を果たすのではないか。それくらい今回の試みは成功だったと思っている。
著者プロフィール
氏原英明 (うじはら・ひであき)
1977年生まれ。大学を卒業後に地方新聞社勤務を経て2003年に独立。高校野球からプロ野球メジャーリーグまでを取材。取材した選手の成長を追い、日本の育成について考察。著書に『甲子園という病』(新潮新書)『アスリートたちの限界突破』(青志社)がある。音声アプリVoicyのパーソナリティ(https://voicy.jp/channel/2266/657968)をつとめ、パ・リーグ応援マガジン『PLジャーナル限界突パ』(https://www7.targma.jp/genkaitoppa/)を発行している
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