夏の甲子園で見つけた逸材! 鳴門渦潮のエースで4番・岡田力樹のスイングに見たバットマンとしての将来性 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 中村の速球を弾き返した強烈なゴロがショートに飛んだ。早稲田実業の遊撃手・宇野が捕球するも、打球に押されたのか、スローイングに定評がある宇野の一塁送球が珍しくショートバウンドになった。

「こりゃ、バッターだろう」

 バットマンとしての将来性がキラキラと輝いて見えた。

 3打席目は、地面スレスレのスライダーを絶妙なバットコントロールでセンターに抜ける打球。炎天下のグラウンドですでに100球以上を投げている体で、一塁駆け抜けのタイムが3秒98のタフネスぶり。投手としても9回を完投し、185球を投げ抜いた。

 野手としてのプレーは見られなかったが、早稲田実業の3番・高崎亘弘の強烈なピッチャー返しを、顔をそむけずにキャッチしたプレーは、反射神経のよさもさることながら、投げたボールをインパクトまで見届けて、そのあとは"9人目の野手"になる。そうした意識をしっかり持ち合わせているように思えた。

 試合には敗れたが、これだけの過酷な状況で見事なパフォーマンスを見せた岡田。だが試合後の岡田の表情には、ヘトヘト感がまるでなかった。むしろ憧れの舞台で、完全燃焼した者の清々しさが伝わってきた。

 きっとこの秋からは「バットマン・岡田力樹」の野球人生が始まるんだろうなぁ......と、勝手に想像してしまっていた。


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著者プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。

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