甲子園に3度出場した万波中正 3年夏は名門・横浜の4番として吉田輝星から意地の2安打を放つ

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru

プロ野球選手の甲子園奮戦記(11)〜万波中正(日本ハム)

横浜高校時代、甲子園に3度出場した万波中正 photo by Ohtomo Yoshiyuki横浜高校時代、甲子園に3度出場した万波中正 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る

【1年夏の神奈川大会で大アーチ】

「スーパー中学生」と言われていた万波中正(日本ハム)の打撃は、横浜高校入学直後から異彩を放っていた。1年夏の神奈川大会では、3回戦で横浜スタジアムのバックスクリーンに飛び込む公式戦初本塁打を記録。

 第98回大会の夏の甲子園では出場機会はなかったが、その秋から神奈川の名門・横浜の4番も担いながら活躍した。

 2017年、2年生になった万波は2度目の大舞台を経験する。第99回大会の夏の甲子園、大会4日目の秀岳館(熊本)との1回戦で「5番・ライト」としてスタメン出場を果たす。

 2回裏に巡ってきた第1打席は、インハイのストレートに手が出て空振り三振。無死一塁で巡ってきた5回裏の第2打席は四球。それでも、7回裏二死一塁の第3打席では秀岳館の2番手としてマウンドに上がった田浦文丸(現・ソフトバンク)が投じた初球の変化球をとらえてライト前ヒット。主将で6番を担う福永奨(現・オリックス)の3ラン本塁打の呼び水となる一打を放った。

「久しぶりに逆方向へ打てましたし、打撃ではいい働きができたと思う」

 だが、試合は4対6で敗れ初戦敗退。万波の顔に笑みはなかった。

「来年は、甲子園で春夏連覇を果たしたい。試合の流れを変えられる一発、チームに勇気を与えられる一発を打てるバッターになりたい」

 秀岳館戦での万波は、7回表に4番手として聖地のマウンドにも上がった。最速146キロを誇る右腕は、先頭をセンターフライ、つづく打者をショートゴロに打ちとった。ともに決め球は、自信のあるストレートだった。だが、二死から連打と四球(敬遠)で満塁とされると、万波はマウンドを降りて再びライトのポジションへ向かった。

「ヒットを打たれたのは同じ2年生......。球速をもっと上げないといけないと思った。真っすぐを突き詰めていきたい」

 ピッチングでも課題を口にして、甲子園を去った。

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著者プロフィール

  • 佐々木亨

    佐々木亨 (ささき・とおる)

    スポーツライター。1974年岩手県生まれ。雑誌編集者を経て独立。著書に『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)、『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボールマガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)などがある。

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