高校野球「下剋上球児・第2章」白山を甲子園へ導いた東拓司監督、昴学園での挑戦 (4ページ目)
それでも、海星の壁は高かった。海星は春2回、夏11回甲子園出場経験のある強豪で、身長2メートルの大型右腕・増地咲乃介が注目されている。昴学園戦では内野陣が好守備を連発し、昴学園の反撃の芽をことごとく摘んだ。
こうした強豪を相手に、今後どうすれば対抗できるようになると思うか。そう尋ねると、東監督は気持ちの整理がまだついていなかったのだろう。「今後か......」とつぶやいてから、こう答えた。
「このチームは秋、春と県大会を経験させてもらってきましたけど、夏の舞台はまたちょっと違う雰囲気があります。そういうところで力を出せるチームにしないといけないし、あとは武器を持てるかどうか。ウチは打てないとシュンとしてしまいましたけど、海星さんはいつもより打てなくてもセカンドの子が最後にすばらしい守備をしてみせたり、引き出しを持っていました。そういうところやと思います」
最後に青木に聞いてみた。これから後輩たちが「下剋上」するには、何が必要か。青木は少し考えてから、こう答えた。
「しんどいこと、苦しいことから逃げずに、乗り越えることだと思います。夏の大会は苦しい場面がたくさんあります。先生にやらされる野球ではなく、自分らで乗り越える野球ができるチームになってほしいです」
新チームには2年生ながらエースを務めた河田虎優希(こうき)ら、4人の先発メンバーが残る。今夏の悔しい経験が、「下剋上球児・第2章」をさらに味わい深い物語へと昇華させるような気がしてならない。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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