高校野球「下剋上球児・第2章」白山を甲子園へ導いた東拓司監督、昴学園での挑戦 (3ページ目)
といっても、全国から有望な選手が集まってくるわけではない。ベテラン指導者の冨山悦敬コーチは言う。
「中学時代にトップレベルだった子なんてほとんどいないし、大台町で育成してるようなもんやで。でも、家族みたいなもんやから、それがええんやないかな。県外から来た子でも、町の人が『若い子が来てくれた』と温かく迎えて、応援してくれるしね」
ちなみに冨山コーチは、6年前の三重大会決勝戦で白山と対戦したライバル校・松阪商の監督だった。言わば鈴木亮平が演じた南雲脩司と松平健が演じた賀門英助が新天地でタッグを組んで、甲子園を目指しているようなものである。
【下剋上に必要なこと】
主将を務める青木大斗は、愛知・知多東浦シニア時代には2番手捕手だった。昨年秋に取材した際には、何度も「自信がありません」と繰り返す姿が印象的だった。
そんな青木も、今夏にかけて急成長を遂げていた。冨山コーチが明かす。
「青木に関しては、東くんと言うとったんよ。『あいつは120パーセントになったな』って。バッティングがようなって、本人も『自信があります』って言うとったからね」
下位打順を打つことが多かった青木だが、海星との試合では「5番・捕手」で先発出場。3打席目にはセンター前へクリーンヒットを放ったほか、2四球を選んで3回も出塁している。
青木は、こんな実感を口にした。
「最後の夏が近くなってきて、『今までやってきたことを出しきろう』と思ったら、最近になっていきなり打てるようになりました。それまでは不甲斐ないプレーばかりしていて、東先生から厳しい言葉をかけられていたんですけど、最後の夏にようやく実ったと思います。東先生には本当に感謝しかないですね」
もし、3年前の自分が今の自分を見たら、どんな感想を漏らすだろうか。そう尋ねると、青木は「たぶん、すごくビックリすると思います」と笑った。
東監督は青木について、こんな評価を口にした。
「新チームの最初は不器用なキャプテンだったんですけど、最後は実力で5番まで打順が上がってきて。チャンスで一本を出してくれる、期待の持てる選手になってくれましたね」
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