35歳のオールドルーキー 無名の日本人投手・高塩将樹が台湾プロ野球からドラフト指名を受けるまで (3ページ目)
指導者たちは「ここは夢を叶える場であると同時に、夢をあきらめる場でもある」と、年齢のいった選手には引退を進言するが、何年もプレーを続けてきた"ベテラン独立リーガー"の存在なしに、リーグの質が保てないことを誰よりも知っているのも彼らだ。
ベテラン独立リーガーとなった高塩は、福島で2シーズンプレーした。ここでも彼は主戦投手としてマウンドに上がり、成績もオーストラリアに渡る前とほとんど変わらなかったが、NPBから声がかかることはなかった。
【台湾の社会人野球で実績】
その後、彼の名前を聞くことはなくなった。BCリーグでプレーした最後の年で27歳だった。
それから7年後、台湾で再び彼の名を聞くことになった。記憶を呼び戻しながら「まだやってたのか」と驚かずにはいられなかった。
福島ホープスを退団後、台湾プロ野球のトライアウトを受験したという。このトライアウトには残念ながら合格しなかったものの、150キロに迫る彼の投球を台湾球界は離さなかった。
台湾にはファームリーグを備えたトッププロと、CPBLの下に社会人野球が存在する。社会人野球とはいうものの、その最高峰の大会「ポップコーンリーグ」に参加する大企業、主要自治体がバックにつくチームともなると、選手は野球に専念しながら給料をもらっており、野球だけで十分に食べていける。
高塩は社会人野球チームに入団し、ここでも主戦投手として活躍。1年目の2017年にはポップコーンリーグで7勝1敗、防御率1.78という圧倒的な数字でベストナインに選ばれている。
その後も衰えることを知らない彼のピッチングにプロも注目するようになった。
2021年末にCPBLは一定の条件を満たした外国人留学生、そして台湾の社会人野球でプレーする外国人選手に、ドラフトの門戸を開けた。これにより高塩も2022年からドラフト会議の指名対象選手になるも、一昨年、昨年と指名漏れに終わった。それでも高塩はあきらめることなく、野球を続けた。
3 / 4