好投手揃う青森からまた逸材出現 八戸工大一の大型左腕・金渕光希は全国でもトップクラスのポテンシャル (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 立ち上がりの1イニングでは、颯佐心汰(中央学院)から高めのストレートで空振り三振を奪うなど打者3人で退けた。

 だが、2イニング目に入ると4安打を浴び、守備の乱れも絡んで4失点と崩れた。指にかかったストレートは惚れ惚れする球筋で捕手のミットに収まる反面、この日は指にうまくかからない球も目についた。

 その点に触れると、金渕は「最近、指にかかる球がいってなかったんです」と明かした。今年の八戸は降雪量こそ多くなかったものの、まだ春先の調整段階だったという事情もある。この合宿にピークを持っていくのは、至難の業だった。

 自分自身に言い聞かせるように、金渕は最後にこんな言葉を口にした。

「今はちょっと落ち込んでいるんですけど、引きずっていたら次につながらないので。切り替えて、次につなげていきたいです」

【春季大会で八戸学院光星を完封】

 結果だけを見れば、大きなアピールはできなかった。それでも、金渕の素材としてのよさはバックネット裏で見守ったスカウト陣にも十分に伝わったはずだ。

 そして、合宿での結果がすべてではない。U−18代表監督の小倉監督は、紅白戦の試合後にこう語っている。

「今回の合宿に参加したメンバーで決まるわけじゃないですから、心配しなくてもいいんです。言い方が難しいですが、今回打たれたからといって、シュンとしなくていいよ。バッターと相対してくれたらそれでいいよと言ってやりたいですね」

 今年の青森県は近年稀に見る群雄割拠が予想される。センバツに出場した青森山田、八戸学院光星の2校だけでなく、金渕を擁する八戸工大一、さらに弘前学院聖愛にも力がある。4校とも好投手がいる点でも共通している。そして今春の青森大会準々決勝では、金渕は八戸学院光星を完封して3対0で撃破。つばぜり合いは夏の大会まで続いていく。

 金渕のポテンシャルが青森のみならず、全国でもトップクラスなのは間違いない。これからも自身が納得のいくボールをコンスタントに投げられれば、金渕光希の名前は自然と全国にとどろくはずだ。

プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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