指名漏れからの再スタート 高校通算62本塁打のスラッガー・真鍋慧が新打撃フォームで挑む大学野球
今年より大阪商業大でプレーする真鍋慧 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る
【ボンズから真鍋に変わった】
南港中央野球場の左打席に入った真鍋慧(けいた)を見て、違和感を覚えた。
構え方が明らかに違う。グリップの位置が低くなり、バットヘッドを三塁側ベンチ方面に向けて投手と相対する。王道のスラッガー然としていた高校時代よりも、やや変則的な構えである。
試合後に大阪商業大の富山陽一監督に真鍋のフォーム変更について聞いてみると、こんな反応が返ってきた。
「ボンズから真鍋に変わった、いうことちゃいますか」
高校時代の真鍋は「広陵のボンズ」の異名があった。そのスケールの大きさから広陵高の中井哲之監督がバリー・ボンズ(元ジャイアンツほか)になぞらえて「ボンズ」と呼び始め、チーム内に浸透。練習用ユニホームのズボンの腰部分には、カタカナで「ボンズ」と書かれていた。
高校通算64本塁打の実績を残してプロ志望届を提出したが、昨秋のドラフト会議では指名漏れに終わった。「3位以内の指名がなければ大学進学」という条件にマッチする球団がなかったためだ。大学は中井監督の母校であり、多くの広陵OBが進学する大阪商業大に進んだ。
4月6日、デビュー戦となる大阪学院大戦に2番・DHで先発起用された真鍋は、前述のとおり別人と思うほど変貌した打撃フォームで登場した。
過去との決別。そんな意味合いもあるのだろうか。真鍋に聞くと、「とくにそういう思いはありません」と答えが返ってきた。
「足も上げるようにしましたけど、どうやって(大学で)通用する打ち方にできるかを考えて変えていきました」
高校時代は構えが硬く、スイング時に力んでしまう原因になっていると感じたという。高校3年夏の大会を終えたあと、力みをなくす目的で行きついたのが現在の打撃フォームだった。
デビュー戦での真鍋は2打席目にセンターオーバーの先制タイムリー二塁打を放った。木製バットでも打球はぐんぐん伸び、中堅まで122メートルある南港中央野球場のバックスクリーン手前まで達した。3打席目にも2打席連続タイムリーとなるセンター前ヒットを記録。5打数2安打2打点と、上々の大学デビューを飾っている。
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。