慶應義塾が「想定外の勝利」で103年ぶり決勝進出 盤石の王者・仙台育英にどう立ち向かうのか

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 想定内と想定外──。

 想定内は仙台育英。初戦の浦和学院戦こそ投手陣の不調で19対9の乱打戦となったものの、中5日空いた2回戦以降はほぼプランどおりに進んでいると言っていい。

【仙台育英、盤石の継投策】

 2回戦の聖光学院戦は、背番号11の左腕・田中優飛が4回途中まで踏ん張り、あとを継いだ主戦の湯田統真は4回1/3を63球しか投げずにすんだ。さらに、終盤の猛攻で8対2と大差がついたため、背番号1の高橋煌稀はわずか1イニング、7球しか投げていない。

 3回戦の履正社戦は4対3の接戦。湯田が5回で85球、高橋が4回で54球を投じたが、準々決勝の花巻東戦は4回までに8点の大量リードを奪ったことで、先発した湯田を4回、51球で下げる余裕ができた。5回以降は甲子園初登板の2年生左腕・武藤陽世、制球に不安がある仁田陽翔を起用、そして田中とつなぎ、高橋を登板させずに終えた。

 試合後、須江航監督もその点を評価していた。
 
「(9対0から9回裏に4点を追い上げられ)最後、ブルペンに入っちゃいましたけど、高橋が休めたのは大きい」

 その高橋は準決勝の神村学園戦で満を持して今大会初先発。5回で82球を要し、被安打6と本来の調子ではなかったものの、7三振を奪い、2失点にまとめた。

「高橋の先発はローテーションどおり。(疲労が少なく)フレッシュなピッチャーを使おうと。ホームラン性の打球がありましたけど(5回表二死二塁で3番・秋元悠汰がレフトへ大飛球)、疲労がなく、球威があったからぎりぎり(フェンス前で)収まった。(レフトへの打球が伸びる)浜風が吹いてなかったのもラッキーでしたけど、球威が落ちたらあの打球は入っていたでしょう」(須江監督)

 そのあとを継いだ湯田は4回、43球を投げて無失点。1安打、無四球と安定した投球を披露した。中1日で迎える決勝は高橋、湯田の両右腕が大きな疲労なく迎えることができる。

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