早稲田大・小宮山悟監督「最強の鬼になる」 六大学野球で5連勝から急失速、秋での逆襲を誓う (3ページ目)

  • 白鳥純一●撮影・文 text & photo by Shiratori Junichi

【明治大に連敗で3連覇を許す「秋のリーグ戦で逆襲したい」】

 その明治大との初戦のマウンドには「体力は万全でなかったと思う」という加藤を中3日で起用。だが、ふだんは制球力に定評のある右腕も、この日は連投による疲れのせいかコントロールが乱れ、4回を投げて5四球7失点となった。

 小宮山監督が「覚悟はしていたが、それでも(早稲田のエースナンバーでもある)11番はそれを乗り越えないといけない。こういう状況でも戦える力をつけなければいけない」と大事な試合を振り返った。マウンドを託されたエースは、初回に明治大の主将で4番を務める上田希由翔 (きゅうと・4年)に先制タイムリーを許し、失点を重ねていった。

 その後も、5投手の継投で15失点。好調だったはずの打線も、明治大の先発村田賢一(4年)らの前に沈黙した。試合中、小宮山監督自らがマウンドに向かって加藤に檄を飛ばす光景からは、この試合にかける小宮山監督の並々ならぬ気持ちも感じさせたが......その心情とは対照的に、15対4の大差で初戦を落とした。

 そして、明治大の優勝に王手がかかった第2戦も、初回に明治大の上田と杉崎成(3年)のタイムリーで3失点を喫し、終始リードを許す展開で試合は進んだ。早稲田大は6回に吉納翼(3年)の3ラン本塁打で1点差に詰め寄るものの、8回に明治大の小島大河(2年)の2ラン本塁打で再び突き放されると、6対3で試合終了。勝ち点を逃した早稲田大は、目の前で明治大に85年ぶりの3連覇を許すこととなった。

「秋に明治に勝つためには、すべてで上回らないといけない」。

 2試合を振り返った小宮山監督は、今季の最終カードとして5月27日から行われる"早慶戦"を「秋のリーグ戦につながる試合にしたい」としながら、「夏はチームを徹底的に鍛えて、秋のリーグ戦で逆襲できるようにしっかりやっていきたい。そのためにはチームの一人ひとりが、どこを目指すのかが大事だと思う。もし彼らが望むのであれば、私は"最強の鬼"になる。その心意気に応えたい」とコメント。5連勝のあと、1分4敗と苦しんだチームの逆襲に意欲を見せた。

「すぐには(気持ちを)切り替えられないけど、秋のリーグ戦につなげられるようにしたい。最後は4年生に笑って卒業してもらいたい」(吉納翼)と、選手たちも小宮山監督の気持ちに応える覚悟だ。ただ、春季は中継ぎとして安定した投球を披露した田和廉(2年)が肘の手術による離脱を強いられるなど、厳しい戦力事情も垣間見える。

 圧倒的な選手層を武器に、日替わりのヒーローが生まれた明治大を上回る戦う集団を作り上げることができるのか。2020年秋大会以来の王座奪還に向け、捲土重来を期す小宮山監督の手腕が問われることになりそうだ。

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