2年後のドラフトを賑わす超逸材。大商大の渡部聖弥が大学日本代表候補合宿で極上の打撃術を見せつけた (2ページ目)
対戦したのは、いずれも来年のドラフト候補に挙がる好投手たち。今回の代表候補合宿は投手のレベルが非常に高く、12月というのに150キロ台の球速を披露する投手が相次いだ。対照的に打者のバットは湿りがちだっただけに、渡部の快打は一層際立った。
高校の同級生・宗山塁へのライバル心
渡部は紅白戦の結果を振り返り、「速い球に打ち負けることなく、自分のスイングができました」と手応えを口にした。
渡部の大きな特長は、力強くスイングしながらもバットの芯でボールをとらえる能力がずば抜けていることだ。どうしてこんな芸当ができるのか尋ねると、渡部はこう答えた。
「僕は打つポイントをすごく体の近くに置いていて、そのためにはスイングスピードが必要なので、昨年の冬はもっと速くスイングできるように取り組んできました」
ボールを自分の手元まで呼び込み、瞬時に正確にバットの芯でとらえる。そんな渡部の打撃スタイルを可能にしているのが、現在149キロに達する並外れたスイングスピードなのだ。
肉体的にも大きな進化を遂げている。広陵高時代は75キロだった体重が、現在は87キロまで増えている。ビルドアップしつつも、代表候補合宿の50メートル走計測(光電管を使用)で全体5位の6秒15をマークしたようにスピードも損なわれていない。センターからの低い軌道で伸びてくるスローイングも大きな武器になっている。
今回は同じく広陵高出身の宗山塁(明治大2年)とともに、代表候補合宿を過ごした。宗山は今や名門・明治大の顔として攻守にスター性を見せつけている。渡部は宗山に対して「負けたくないですけど、お互いに頑張りたい」とほのかなライバル心を口にした。
いささか気が早いが、宗山と渡部の"広陵同級生コンビ"がおそらく今後2年間の大学日本代表を引っ張っていくはずだ。合宿最終日、鋭い腰のターンで強烈なライナーを連発する渡部の打撃練習を見て、日の丸のユニホームを着ている姿がはっきりとイメージできた。
そして、その進化は近未来のプロ野球への希望へとつながっていく。渡部聖弥──その名前を覚えておいて決して損はないはずだ。
【著者プロフィール】菊地高弘(きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数
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