最速148キロで一躍ドラフト候補に。常葉菊川のサイドスロー・安西叶翔はポテンシャルの塊 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuhi Takahiro

 スタンドから見ていても、安西の「本気のストレート」は一目瞭然だった。うなるような剛速球が捕手に向かって加速していく。エネルギーをセーブしたストレートとは明らかに違う。抽象的な表現になるが、夢を感じさせるボールだった。

 カウント球にも勝負球にも使えるスライダー、打者の手元で動くナチュラルシュート、打者をのめらせるチェンジアップ、ここぞの場面で三振を奪えるフォーク。変化球のレベルも向上してきた。間違いなく、今秋のドラフト有力候補になるだろう。

無数の課題と無限の可能性

 ただし、高校トップレベルのチーム相手に力を発揮できるかと言えば、疑問も残る。大会直前に神奈川の強豪・慶應義塾との練習試合に登板し、4回を投げて被安打10、失点8と打ち込まれている。安西は自分の力不足を痛感したという。

「コースに決まった球も簡単に弾き返されて、まだまだ自分が甲子園で戦えるレベルじゃないとわかりました」

 石岡諒哉監督は「まだまだ粗削り」と、安西が素材段階であることを強調した。

「高校入学当時は180センチもなくて、体もヒョロヒョロでした。ふた冬越えて体が大きくなり、出力も上がってきました。出力の向上に体の感覚がついていかなくてバランスを崩した時期もありましたが、今はだいぶ扱えるようになってきました。それでも、まだ細かいことは教えていませんし、完成されていません。慶應戦のように試合を壊してしまうところは、今も課題です」

 1年秋、2年春に背番号1を背負って以来、今夏は久しぶりにエースナンバーをつけてマウンドに帰ってきた。カミソリで頭髪を刈り、気合いは十分だ。

「エース番号にはこだわってきましたが、チームを背負っていくのはどの番号でも同じなので。自分に限らず、マウンドに立った人間がエースのつもりでやっています」

 今の姿だけを見て、安西がプロで通用するかを論ずるのは無意味だろう。それほど、この投手には無数の課題と無限の可能性が詰まっている。

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