2021.08.17

巨人・大江竜聖をしのぐキレと度胸。二松学舎の左腕は必殺クロスファイアーを武器に上位進出を狙う

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 二松学舎大付の市原勝人監督は甲子園出場を決めた試合後、なかばあきれたような表情でこう語った。

「秋山に『気持ちで負けるな』と声をかけたら、『気持ちじゃ絶対に負けません!』と返してきたんです」

 その顔つきは誇らしげでもあった。

 秋山正雲(せいうん)。名前の由来は父、兄の名前にもついている「正」に、父が三国志好きということから関羽雲長、趙雲子龍の「雲」の字が組み合わされた。父は「たくましくあれ」という思いを「雲」の字に込めたという。

身長170センチながら最速146キロを誇る二松学舎大付の秋山正雲身長170センチながら最速146キロを誇る二松学舎大付の秋山正雲 この記事に関連する写真を見る  身長170センチ、体重75キロと体型的には小柄な部類に入る。だが、秋山の言葉を聞いていると、その気持ちの強さが前面ににじみ出てくる。

「監督さんが育成功労賞の表彰で(今夏の)甲子園に行かれるので、ひとりで行かせるわけにはいかないと思っていました」

「エラーはあるものと考えているので。エラーが出たら『仲間を助けてやる!』という気持ちで投げています」

 今回の原稿を書くにあたり、秋山の取材メモを読み返して我が目を疑った。秋山のコメントをメモしたはずなのに、私は無意識のうちに秋山を「大江」と記していたのだ。二松学舎大付の5年先輩にあたる大江竜聖(現・巨人)の高校時代と、シルエットも投球スタイルも重なる。

 大江の高校時代で思い出すシーンがある。大江が高校2年生だった秋の東京大会2回戦で、二松学舎大付は早稲田実と対戦した。早稲田実の怪物1年生・清宮幸太郎(現・日本ハム)が注目されるなか、大江は清宮に2安打を許した。だが、0対1のビハインドで迎えた9回表の清宮の打席は、ひりつくような名勝負になった。

 大江のエンジン全開のボールに清宮が粘り、フルカウントからの9球目。大江は普段より腰をひねったトルネード気味のフォームから渾身のストレートを投げ込み、清宮を空振り三振に抑えた。大江の魂のこもった投球に打線も奮起し、二松学舎大付は延長戦の末に早稲田実を破ったのだった。