甲子園史に残る新旧「スーパー1年生コンビ」対決。快進撃の早実を横浜が迎え撃った (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 その夏、スーパー1年生コンビが勢いをつけた早実を決勝で迎え撃ったのは、2年前に甲子園出場を果たした愛甲猛と安西健二の"元スーパー1年生コンビ"だった。1978年の夏の甲子園の初戦で愛甲は2失点完投勝利。身長166cmの安西はその試合でホームランを放っている。

荒木と小沢に刺激を受けたのは、味方だけではなかった。横浜のキャプテンを務めていた愛甲は言う。

「早実との決勝戦前には、安西健二が『1年坊主に記録を作らせるんじゃねえぞ』とチームメイトにハッパをかけていました。『コントロールがいいから初球からいこう』と」

 初戦の北陽戦から44回1/3連続無失点の好投を続けていた荒木は、初回に初めての失点を喫した。3回でマウンドを降り、4-6で横浜の勝利。スーパー1年生の活躍に沸いた1980年夏の甲子園は、横浜の初優勝で幕を閉じた。

 あれから41年が経った――試合巧者の広島新庄を相手に劇的勝利を飾った横浜は、次戦で優勝候補の一角である智弁学園と対戦する。この試合のカギを握るのは、身長167cmの"切り込み隊長"緒方だ。横浜の村田監督は言う。

「緒方はもともとバッティングのいい選手です。横浜の一番打者であることにこだわって、ひたむきに練習してきました。私は自信を持って、緒方を一番で起用しています。

 明るく元気よく、1年生らしくプレーしてします。試合になれば、動じることなく、上級生にも積極的に声をかけています。チームに必要な"人間力"を持っている選手です」

 1年生だからミスもある。1回戦で送りバントを失敗したが、最後に大きな仕事をやってのけた。村田監督が続ける。

「普通なら、3回のバント失敗でほかのプレーもうまくいかなくなるものですが、守備でリセットしました。切り替えのできる選手です」

 チームメイトは、1年生の緒方や杉山の活躍を見て何を思ったのか。今度は先輩たちが結果を出す番だ。

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