甲子園史に残る新旧「スーパー1年生コンビ」対決。快進撃の早実を横浜が迎え撃った

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 好リードで1年生投手を盛り立てた3年生捕手の佐藤孝治がこう振り返る。

「大輔は度胸があってコントロールもいいから、インコースを投げることを怖がらない。スピード自体は速くなかったので、バッターが打ち気でくる。でも、低めのボールは落ちるし、高めのボールはシュッと伸びる。詰まった打球は内野ゴロになりました。北陽戦は27アウトのうち、内野ゴロは16本、そのうちセカンドゴロが7本ですか。二塁手の小沢章一が守備位置を変えながらうまく守ってくれました」

 一番打者の小沢、背番号11のエース・荒木の活躍で、早実は決勝に駒を進めた。

 16歳の荒木には150キロを超える快速球も、打者を翻弄する魔球があるわけでもなかった。それなのになぜ並み居る強打者を打ち取ることができたのか? 早実から早稲田大学に進み、日本石油(現JX-ENEOS)でも捕手として活躍した佐藤はこう分析する。

「大輔のピッチャーとして一番いい部分は、ある意味、不感症であるところ。絶対にまわりに左右されることがない。たったひとりでシャドウピッチングしているときも、大観衆が見守る甲子園のマウンドでも同じ気持ちでいることができる。

 気持ちのたかぶりもないし、緊張もしない。これが大きいと思う。早実のブルペンも甲子園のマウンドも同じように投げることができる。そんなピッチャーはなかなかいません」

 高校に入学して初めての夏に甲子園に立つスーパー1年生が、実力も運も兼ね備えていたことは間違いない。だが、それだけで聖地では結果を残せない。佐藤が言う。

「大輔には自分を大きく見せようという、そういう欲みたいなものがない。だから、普段の姿のままでマウンドに上がる。どこにいても同じということに関して、感心しましたね。僕も、大輔が緊張しているのかしてないのか、よくわからなかった」

 さまざまな経験を積んだ上級生は、試合の流れを読んでしまうことがある。相手との実力差を過敏に感じ取ってしまう者もいる。だから、無欲で試合に臨み、目の前の一球に全力を注ぐ1年生のひたむきな姿が彼らを刺激するのだろう。

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